らぶ or らいく
繋ぐ、想い


ついにこの日がやってきてしまった……。

バレンタイン。

日本では女性が好きな男性、またはお世話になった人にプレゼントを渡す日で、
贈り相手がいる女性にとって1年で1,2を争うくらい大事なイベントだ。
無論それは男性にもいえることで、
気になる女性からプレゼントを貰えるかドキドキしながら待つイベントでもある。
正直気が気でない。
女性に少し苦手意識を持っている辻にとってチョコは欲しいけど、
どうすればいいのか分からないが先行してしまう心臓に悪いイベントだった。
今年は彼女がいる身にはなったが、
それでも気が気でないという点においては今年も変わらない。
勿論バレンタインのプレゼントが貰えるかという点で不安になっているわけではない。
初めて彼女と一緒に向かえるバレンタインだからだ。
心構えとか作法とかあるのかは知らないが、
大事な人だからこそどうすればいいのか分からないという想いが強くなり、
「どちらにしても辻ちゃんは大変だね〜」と笑っていたのは先輩で同じ隊の犬飼だった。
「普通にありがとうって言えばいいのにー」と言ったのは犬飼で、
「彼女なら花束を渡せばいいんじゃないか」と言ったのは隊長の二宮だ。
この2人……かなりモテる部類の人間であり、2人とも本気で言っていた。
辻へのアドバイスを要約すると自分の気持ちをきちんと伝えることであった。
二人からのアドバイスで辻の気持ちは大分スッキリしていた。
通りすがりの花屋で"flower Valentine"の文字を見た時は少し胸がドキドキした。
言葉にするのは苦手でなかなか伝えられない自分だけど、
だからこそ彼女に自分から伝えたかった。
勇気を出して定員に話しかけ、慣れない……寧ろ初めて花束を買った辻は、
昨年とは違うドキドキを味わっていた。

「…神威さんっ!」
「辻くん!?」

防衛任務が終わって急いで学校に戻ったもののもう放課後。
ある意味丁度いいかもしれないこのタイミング。
ドキドキしている辻とは反対にアキは安堵していた。

「良かったー今日はもう会えないのかなって思ったよ」

彼女が辻に会いたかったと告げる想いに辻の身体が熱くなる。
嬉しい。嬉しいけどそうではなくて――…

「神威さん、これ……」
「え?」
「いつも神威さんに貰っているから……俺も何か渡したくて――」

言うと辻は小さな花束をアキに差し出した。
まさか、自分がプレゼントされるとは思ってもいなかったアキは正直驚いた。
だけど辻が一生懸命話してくれるから……それに愛を感じて嬉しそうに笑った。

「私の方が辻くんに貰ってばかりだよ」

アキは小さく呟いた。
そして顔を赤くしながら自分の気持ちを口にする。

「辻くん、すき」
「俺も……好き……」
「よかったー」

言うとアキは自分の鞄を漁り、辻にチョコを差し出した。

「私の気持ちです。受け取ってください」
「……ありがとう」
「えへへ…付き合っててもやっぱり照れるね」
「そうだね」
「辻くん」
「?」
「だーいすき」

照れてる辻を見てアキは辻の手をとる。
一瞬だけ辻が驚いたのが伝わってきたが、
握り返された手にアキも握り返す。

プレゼントも嬉しかった。
好きだって言ってくれたのも嬉しかった。
そして今、握り返してくれたことが嬉しくて――…

――幸せだなぁ。

二人して同じことを思った。


20170214


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