らぶ or らいく
恋に恋するチョコの行方
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「また、失敗したー」
部屋中に甘い匂いが漂う。
だけど私はまた、失敗した。
可笑しいな本の通りに分量も図って、混ぜて、焼いてるのに……
何がいけないんだろう?
「すげー匂い」
「あ、カゲ。いくらお隣だからって勝手に入ってこないでよ」
「おばさんに上がっていいって言われたんだよ。
文句ならお前の母親に言え」
「お母さん……」
確かにカゲは幼馴染だけどさ、
この時期に上げるのはどうかと思うよ?
絶賛、義理チョコ作成中の現場を、
しかも失敗しているところを見られるのって幼馴染的にも女子的にも恥ずかしい……。
「お前懲りねーな」
「だって今年こそ手作りあげたいじゃない!」
「それ、去年も聞いたな」
うん、言ったよ。
そして失敗したから結局ちゃんとできてるもの買って渡したよ。
「今年も安心して食えるもので良かった」って当真達に言われたよ!
マジで来年は手作り渡して泣いて喜んでもらおうって思ったからね。
私、その信念だけで今年も戦ってる。
……今のところ惨敗中だけど。
「高校に上がってから手作りにこだわりすぎだろ」
「だっていつかの時のために作れるようになっておきたいじゃない」
大好きな人に手作りを渡す……私の理想なんだよ。
少女漫画みたいな恋愛したいって思っちゃうんだもん。
だったら少しでも実現させる努力はするべきだと思うでしょ?
漫画と現実は違うとか言わないでよ。
分かってるから。それでも憧れるものは憧れるんだよ。
好きな人に自分の作ったものを美味しいって言ってもらえるの……
その話したら今ちゃんからまずは相手を見つけなさいって正論言われたけど。
……いいもん。
私、皆好きだし。あと、当真達見返す。
その想いで今年も……チョコレートを焦がした。
「……好きな奴いるのかよ」
「いたら、ここで挫けないで再チャレンジしてる」
「そーかよ」
言うとカゲがリビングにある椅子にどかっと座る。
こいつ、慣れ慣れすぎない?
幼馴染だからって少しは礼儀を弁えてよ。
「勿体ねーから、今年も後始末してやるよ」
「うわ、屈辱なんだけど」
「そーかよ」
テーブルに置いてある失敗作たち。
カゲがその中の一つを口に運ぶ。
「苦っ」
「……知ってる。
あーあ、今年こそはって思ったのに」
「いや、これは頑張っても無理だろ」
「五月蠅いなー。今年もキット○ット配りまくるから!
文句ないでしょ!」
「そうしろ」
言いながらカゲは今年も私の失敗作を食べる。
持つべきものは幼馴染なのか……
有難いのか悲しいのかよく分からないけど。
私もカゲの前の座って自分の失敗作を食べる。
うわ……これはちょっと……いや、かなり……。
そういえば少女漫画では彼女が失敗した料理を美味しいって言って食べてくれるシーンがあったっけ。
あれって言われた方はどんな気持ちになるんだろう。
「ねーねー、カゲ。
これ食べて美味しいって言ってみて」
「は?寝言は寝て言え」
「カゲは乙女心分かってない!」
「意味分かんねーよ」
「いいからさ」
「……うめぇ」
言ってくれた。
嫌そうに言ってくれたよ。
顔は凄く不味そうにしてたからバレバレなんだけど。
っていうか、私が言わせただけなんだけど。
やっぱり漫画と現実は違うよね。
不味いの知ってるから無理して食べられると余計に傷つく……。
「カゲ、もういいよ。来年頑張るから」
「それ、去年も聞いた」
「……そうだっけ」
「おかげで今年も無事、皆で冬越せそうで良かったわ」
「……カゲもだけど、皆私のチョコをなんだと思ってるの!」
こうなったらやけ食いだよ!
不味いせいで涙が出てきそうになるけど、捨てるよりはいいもんね。
「アキ」
「なに?」
「暫くは誰にも食わせるなよ」
「うん」
私の言葉を聞いてカゲが何故か満足そうな顔をした。
20170209
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