境界の先へ
世界から消えたのは

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私たちの世界の中心はお姉ちゃんだった。

お姉ちゃんは優しかった。
面倒見がいいというか、
勉強で困っていたら教えてくれたし、
私の大好きな唐揚げ作ってくれるし、
友達と遊びに行く服を考えてくれたり、
私が困った時にいつも助けてくれる。
見た目だって美人だし、
髪がすごく綺麗で、
光に当たると天使の輪っかが見える。
私の自慢のお姉ちゃんだった。

勿論それはお兄ちゃんにとっても同じで、
口に出さないけど、
凄く好きだったと思う。

私はお兄ちゃんも好きだったけど、
お兄ちゃんは私の事…
ちょっと苦手だったんだと思う。
私がそばに行くといつも困ったような、
不機嫌そうな顔をする。
それでも私が友達と喧嘩したり、
親に怒られたりして泣いた時は
余計な一言を言ってから、
泣き止むまで隣にいてくれる。

私はお姉ちゃんとお兄ちゃんが好きだった。

でも四年前…
お姉ちゃんが死んだ。

近界民に殺された。

私はたまたまそこにいなかったから無事だったけど、
側にいたお兄ちゃんはお姉ちゃんが殺される瞬間を見てしまったらしい。

お姉ちゃんがいなくなって悲しかったけど、
私以上にお兄ちゃんはもっと悲しかったんだと思う。
辛かったんだと思う。

お姉ちゃんが死んでから、
私達は胸がぽっかり空いた感じになった。
実感が湧かない。
時間が経てば経つ程、
お姉ちゃんがいなくなった事実を受け入れるしかなくなっていて、
それでも、お父さんもお母さんもお兄ちゃんもいるから、
悲しくても私はまだ大丈夫だった。


でも

お兄ちゃんは違った。


お兄ちゃんの世界は
お姉ちゃんが中心だったから。

私が話しかけても見向きもしない。

近界民に恨みを募らせ、
お兄ちゃんは近界民を殺すためにボーダーに入った。

お姉ちゃんのためにボーダーに入った。


そして私は…
お兄ちゃんの世界から消えた。


20150602


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