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卑怯もの

世界は皆私を見て笑う。卑怯もの、と。オリンピックでやっと金メダルをとったものの、マスコミからいきなりドーピング疑惑が持ち出され、私の知人と言った人間がでてきて、顔と声を隠しながらトンデモ話をしたのだ。
嘘だ{emj_ip_0792}違う{emj_ip_0792}そんな人は知らない{emj_ip_0792}と反論しても世間は面白がって話をでかくする。

あれから数年。


某動画サイトを気晴らしに見る。大好きなミ●ちゃんのうたの踊ってみたタグを拾っていき、は、と目に留まる。

踊ってみた【ヴィクトル・ニキフォロフ】

とかかれておりそれをみた私は絶賛し、自分のSNSにあげると瞬く間に世界に広がりをみせたのだ
私の垢は世界の有名コーチもフォローしている。
インターネッツの力ってスゴイ。



長谷津にすんでいる勝生に会いに私は飛んだ。東京から九州は少し遠いけど会えばきっとなにかが変わる気がして。

「やあ!!ヒキョーちゃんじゃないかぁ!なんで君がここに?」

は、は、はぁぁ?!?!





ヴィクトル・ニキフォロフ

絶対に許したくない!因縁深い人間がここにいた。





「日本が誇る金メダリストとロシアの英雄ヴィクトル・ニキフォロフ〜ふわぁすごかーゆーり、いつからこんな人たちを手玉にとったと?」
「いえ、取ってません!手玉になんか取ってませんからぁ!」
まさかあの男がここにきてるなんて思いもしなかった。

ヴィクトル・ニキフォロフは相変わらずニコニコと笑っており気持ち悪い。

「これお土産です家族で召し上がって下さい」
テーブルの上に出された包みを勝生家の人ありがたくは受け取った。

「ヒキョーちゃんもユウリの動画を見たの?」
「知らん!」
ぴりぴりと張り積めた空気に勇利はどうしていいかわからずまあまあ、と間に入るだけ。面識なんて一度もないしヴィクトルさえ面識はないはずだ。

「あ、ヒキョーちゃんまさかまだ怒ってるのー?」
「言うな!」
ふいっ、と知らん顔をしてそっぽを向いた。
ヴィクトルは私のことをヒキョーと呼ぶ。卑怯もの。それからとった言葉。
20代前荒れに荒れていたヴィクトルは私を指してこう言った。ヒキョーな女!と
それから私はメディアでさらけものにされた。
「まあ、あのとき俺は15で荒れてたけどさ今は丸くなったよ?」
へらぁと笑う。そうだろうけど。
「だからって、」

私たちはロシア語で会話をしていた。だからロシア語がよくわかっていない勝生家の住人たちはポカンとしている。

「あの、ヴィクトルって荒れてたんですか?」
「え、勇利くんロシア語わかるの?」
正座をしながら目を点にしている勇利くん。
「ユウリスゴいんだよー!ヒキョーちゃん!英語もロシア語も完璧☆中国語もちょっと出来るんだって!」






まえつぎ
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