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床に広がる赤黒い血痕。くるくる回る毒々しいパトランプの光。
どれだけ厳重に蓋をして心の奥底に追いやろうとしても、その記憶は何の前触れもなく蘇ってくる。
忘れてはいけない。忘れ去ってはならない。誰かがけしかけてくるように呼びおこされるその情景は、幾日時が過ぎようと、安らかな思い出に変わることはなく。心に暗い影を落とし続けていた。

「それでも、生きろ」
「今がどれだけ辛くても、苦しくても、生きろ」

何もかもが真っ黒に塗りつぶされて、もうだめだと泣き崩れるたびに、その人の言葉は何度となく打ちひしがれる私を立ち上がらせてくれた。
凛と通った意思の強い声、肩に添えられた手の力強さ。ぼやけた記憶をなんとか手繰り寄せ、ふと思い出しては気持ちを強めて。
消えたがった私をこの世界に必死になって繋ぎとめてくれた彼を、私はずっと探し続けている。