SMOKER
初夜のパニックを経験済みのスモーカーは流石、サユキが泣き悶えるのはあの野郎が原因だと解って居るから、内心本気で歯噛みしつつ此方を向かせる。
「いい。全部見せろ」
頑なに顔を見せないサユキの両手を剥がして、罪悪感で気が狂いそうになっている泣き顔から目を離さない。
「私は……貴方を裏切った……っ!」
「ただの夢、不可抗力だ」
「………愛される資格が……ない………」
「資格もクソもあるか。少なくともおれは、お前を離さねェ」
「………………………にたい……」
「……それこそ裏切りだ。いいか、ここまでおれを受け入れた以上、最後まで付き合え。お前にはその責任ってモンがある」
「…………責任……」
「ああ。当然おれにもある」
「……はい……」
嵐が弱まった所で、普段は殆ど口にしない感情を言葉にした。
「サユキ」
「これだけは忘れるなよ」
「おれは、全部引っくるめてお前を選んだ。……お前が好きだ」
降りしきる、滂沱の涙。
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