COBY


入店する瞬間に直撃アンド連れ去って、サユキは買うも何もない。

張り込みを疑うレベル。

止めた時点では何の店か知らないけど、若さゆえ嫌な予感だけで突っ走るコビー。

今声を上げないとサユキが遠く離れて行ってしまう、と直感で悟れる系男子。


「失礼しますッ!」


姫抱きにして人混みのド真ん中を駆け抜けて、小高い丘でやっと降ろすと土下座。


「勝手な事をしてすみませんでした……!!今引き止めないといけない気がして……!!」


当然呆気に取られるけど、所謂大人の店だから秘密にしてくれる?と尋ねると、動揺して大告白タイム開始。


「ぼっ、ぼぼぼくは!そういった経験がありません!……でッ、ですが!ぼくは、サユキさんと一緒にいたい!!手だって繋ぎたいし、抱き締めたいと思ってます!!」

「だッ、……だッ、だから!ぼくを選んで下さい!!サユキさんの願いは、ぼくが叶えてみせます!!」

「あなたが、好きです!!!!!!」


怒涛の展開に頭が真っ白なサユキの静寂を破って、丘の上の住宅街の住人達から歓声が上がる。


「いいぞいいぞー!」

「お熱いねェー!」

「返事はまだー!?」


窓から覗き込む彼等の前で公開告白になってしまい真っ赤なサユキと、叫び過ぎて肩で息をするコビー。

流れる沈黙。心臓が口から飛び出そうなコビーに、サユキが黙って手を伸べた。


「握って、みますか?」


ほぼ同時に握られて、ガッツリ抱き締められる。

降り注ぐ言祝ぎの雨に打たれながら、グスッと鼻を啜るコビー。


「コビーさん……?」
「ぁ゛……安゛心゛し゛て゛ぇ……」


涙声のかわいいひとに貸したハンカチは、雑用時代に磨かれたという手アイロン技術で完璧な仕上がりだったとさ。


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