固いパン


行きに張り切り過ぎたのか、帰りは退屈な程敵の姿は見られなかった。聖杯を入手したことでガーディアン達の役目が終ってしまったからかもしれない。

神殿に足を踏み入れた際に息を飲んだ大聖堂は、暗闇に目が馴れた後だと少し明るく感じる。

「はあ!息苦しさから解放されるわね」

サーシャは光が漏れ入る神殿入り口に向けて駆け出した。

神殿から顔を出した瞬間、サーシャは息を飲んだ。薄暗い中に白い光が空を彩る景色は明け方のものだ。ということは丸一日近く中にいたということか。しかし、サーシャが驚いたのはそんな時間の流れに対してではなかった。

「……おい、なんだよこれは」

続いて出て来たカインが怒気を含んだ声をあげた。

神殿が埋まる大穴の上空、崖の上に並んでいるのは鎧姿の兵士の姿。穴を取り囲む形でこちらを見下ろしている。

彼らの身につけた鎧に描かれた紋章を見て、カインとサーシャはクリスを見た。

「ど、どういうことだ」

クリスも顔に驚愕の色を浮かべながら後ずさる。

「……白々しい芝居してるんじゃねえよ」

カインが吐き捨てた。取り囲む兵士達に見られる紋章は、パエルニスタ国の兵士である証の横向く鷲だったからだ。

サーシャははあ、と溜息をつくと首を振りながら手をあげた。

取り囲む兵士達の中に弓矢を構える姿を見たからだ。カインの協力もあれば突破は可能かもしれない。ただお尋ね者になるのは御免だった。

カイン、サーシャに睨まれている事に気付いたクリスが慌てて手を振る。

「誤解だ!本当に」

「何が誤解だよ。どう見たってあいつらパエルニスタ国の王族騎士団の奴らじゃねえか」

カインは舌打ちを隠さない。指揮を取っているらしき真ん中にいる男は、王室の正式な紋章が埋め込まれたラージ・シールドを構えている。王家に仕える騎士の証だ。クリスはパエルニスタ国の特殊警備団であり、今目の前にいる兵士達は『キングスナイト』と呼ばれる王族直属の騎士団だ。クリスとは所属は違うのだろうが、係わりが無いとは思えない。

「いや、本当に知らないんだ。何かの間違いだ」

弁解するクリスに水を射す声が上から響き渡った。

「そこの二人、遺跡を荒らしたことは分かっている。おとなしく中で奪った聖杯を渡すように。クリス殿、ご苦労であった」

名前を呼ばれたクリスが信じられないものを見るかのように、声を投げかけた兵士を見上げた。

「……まあ言い訳は後で聞いてあげてもいいわ。会えたなら、だけど」

次々と降りてくる兵士達を見ながら、サーシャはクリスに声をかけた。





薄暗い中に獣脂の蝋燭が作り出す炎が揺れている。黴臭い空気に冷たい床、隣りにいる不機嫌な男の顔にサーシャは最悪な気分だった。

「……何の罪に問われるのかしらね」

答えはない。牢屋に響くのはサーシャの声だけだ。

「重要文化財がどうのこうの言ってたみたいだけど、そんな理屈通るのかしら」

返事が無くてもいいわ、とサーシャはいらいらを発散するように一人しゃべり続けた。無機質な鉄格子を見てからふと目線を上げると、黙ったままサーシャの顔を見るカインに気付いてどきりとする。海底を思わせる深い藍色の瞳が真っ直ぐこちらを見ている。鋭い視線を向けられると、色恋の意味など無くても緊張してしまった。

「……何よ?」

サーシャが口を尖らせ尋ねると、カインは真っ直ぐサーシャを見ながら答える。

「お前、何か隠しているだろ」

一瞬、サーシャに動揺が走る。が、直ぐに言い返した。

「何を?意味がわかんないわよ。ちゃんと説明してくれないと」

「あの女の言っていた言葉の意味、お前分かってるんだろ」

あの女、とは白装束の女のことだろう。カインが何を言っているのか、朧げながら理解し始める。

カインの右手にあるものを見た。柄のみになってしまった魔剣レグヴォルド。身につけていた武具は全て没収されたが、連行してきた衛兵に柄しかない剣を見て鼻で笑われた後、これだけ牢屋に投げ込まれたのだ。

何故彼がそう思ったのか分からずにサーシャは答えに困ったが、冷静さが戻ってきた。

「知らないわ。知っていたとしても言わない。何もね」

「なんでだよ!」

「意味がないからよ」

自分で知るしかない。サーシャに言えるのはここまでだ。仮に組んだ相棒にそこまで親切にする優しさは無い。

「意味ってなんだよ。嫌な女だな」

「私に得が無いじゃない」

この歳で一人旅などを続けていると、どうも性格がシビアになってしまうことは否めない。サーシャはそう答えると背中を向けて、これ以上答える気はないということを示した。

「ちっ、しょうがねえな。……結婚してやるから教えろよ」

カインから発せられた言葉にサーシャの体が固まる。

「は、はあああ!?」

思わず振り返ってしまった。

「な、何に言ってんのよあんた!馬鹿じゃないの!?」

「何がだよ。得が無いって言ったから付けてやったんじゃねえか」

淡々と答えるカインの顔には邪気がない。それが余計にサーシャの顔を赤くした。

「馬鹿!それが何で私の得になるのよ!」

「……女は結婚に一番飛びつく、って習ったんだが」

「あ、あんたねえ!どんな教育受けてきたのよー!」

サーシャはカインに向けて両手を振り回す。カインは困惑、というよりいらついたようにサーシャの攻撃を避けていった。

「なんだよ、訳わかんねえ。……ああ、結婚っていっても子作り行為が嫌なら別に俺はいらな……」

「最低!」

サーシャの渾身の力が篭った拳が、カインの頬に綺麗に入った。
冷える牢屋内とは逆に、かっかと湯気の立ちそうな頭を抱えながらサーシャは隣で座り込むカインを見た。

常識が抜け落ちた男だとは思っていたが、ここまでだったとは。カインに対してよりもこの男に物を教えた名も知らない人物に腹が立ってしょうがない。

絶対まともな国の出身じゃないわ、とサーシャは爪を噛んだ。

カインの方はといえば、ここまでの拒否反応に驚いたのかしおらしい。サーシャがこの男を憎めないのも、こんなところを見せてくるからだった。

「あんた何処の国の出身なの?」

「アルケイディアだ。何か関係あんのかよ」

「大国じゃない。あの国に未開拓な部分なんてあったかしら……」

「なんだよ、失礼な奴だな」

カインがムッとしたように眉を寄せた時、ガシャンという金属音が響いてきたことで二人の動きが止まる。

ブーツの踵が床を鳴らす音が広がり、じょじょに近づいてくる。

「……言い訳を聞かせてもらえるのかしら」

もう会うことは無いと思っていた人物の出現に、サーシャは目一杯の嫌味を投げかけた。
神妙な顔つきをして牢屋の前に立つ男、クリスはじっと鉄格子の鈍く光る扉を眺めていたかと思うと、おもむろに手をかける。

カチャン、冷たい音の響きにサーシャ、カインは目を大きくした。

「……どういうこと?」

サーシャはクリスがたった今鍵を開けた扉と彼の顔を交互に見比べる。

「君達は罪を犯したわけではない。だから牢屋にいるべきではない。……そういうことだ」

クリスは苦笑顔で鉄扉を開け放った。二人に「早く出ろ」というように手招きしている。

「いや、そうじゃなくて……大丈夫なの?こんなことして、あなたが」

「ほい」

クリスはサーシャの質問に答えずに、サーシャの胸当て、カインの鎧を投げてきた。

「カイン殿の剣はここにあるとして、サーシャ殿の弓はどうしても見つからなかった。鎧と一緒に運ばれたはずなんだが」

「でしょうね」

サーシャは胸当てを装備しながら答える。

「いいのかね?」

「大丈夫よ」

サーシャは曖昧に答えると肩を竦め、カインを見た。鎧を着て準備は整っているようだ。

「さ、行くぞ」

クリスは素早い動きで拘留所を後にするべく歩きだす。二人は後に続いた。

二人が投獄されていた独房を出ると、いくつかの牢屋が列んでいる。部屋の入口にいる見張りらしき兵士が、廊下に身を預けてイビキをかいていた。

「……あんたにしちゃ不良なやり方じゃないか」

兵士は魔法によって眠らされているのだ、そう読んだカインが笑うとクリスは真面目な顔で答える。

「ラシャもきっと分かってくださる。何しろ『輪を乱すなかれ』とおっしゃったのだから」

それがなぜ私達のことだと?警備団の仲間のことかもしれないじゃないか。

サーシャは思ったがせっかく逃がしてくれるのだ。水を差すのも悪い。しかしこそこそとは言い難いクリスの堂々とした歩き方に少し呆れそうになった。本当に神のお導きと思っているのかもしれない。

「……ここを出てどうするの?」

サーシャが聞くとクリスはゆっくりと頷いた。

「あの白装束の女性を探す」

「なんでだよ」

カインが舌打ち混じりに吐き捨てるがクリスは動じない。

「……聖杯が何なのか、知っている様子だったからな。それに上手くいけばカイン殿も剣を治してもらえるかもしれんぞ?」

カインは一瞬迷うような素振りを見せたが首を振った。

「消した奴が何で治してくれるんだよ。つーか聖杯が何なのかってどういう意味だ?」

「……詳しい話しは後にしましょう」

サーシャは近づきつつある気配に静かに注意を促した。衛兵のものか、単なる城の住民のものか分からないが、余計な揉め事は避けなければ。

パエルニスタ王城内、流石にクリスはよく知っているようですいすいと歩いていく。それにしても黴臭い通路だ。

「もうすぐ出られる」

クリスの言葉にサーシャは首を傾げた。確かに感じた人の気配が無くなっている。正確には現れたり消えたりといったところか。クリスの案内が良いのか、それとも泳がされているのか分からないが追手は来ない。

「もしかして私達が逃げたの気が付いてない?」

サーシャが尋ねるとクリスは「かもしれん」と呟いた。あんなに物々しい逮捕だったというのにあまり関心は無いのだろうか。

「どうでもいい、出たらこんな国おさらばだ」

カインがムスッとしたまま吐き捨てる。サーシャも同感だったが、クリスの白装束の女を探すという提案、宙ぶらりんとなったままのクラウザー氏の依頼など話し合う必要はありそうだ。

松明が燈るだけの暗い廊下、石階段を上ると木の簡素な扉が見えてくる。

「あそこから出られる」

クリスが指差すのは目の前にある扉だ。城の出入口としては小さい。勝手口のようなものだろうか。

サーシャは扉に張り付くと表の気配を探る。少なくとも周囲に目立った気配は感じない。ゆっくりと扉を開いていくと暗い、だが美しい星空が見えてきた。自然と三人は息をつく。

クリスの手招きに従って暫く歩を進めてみてサーシャは気が付いた。

「もしかして、ここもう城の外?」

パエルニスタ国王城は他の城と呼ばれるもの同様、周りを高い塀で囲んであるはずだった。が、辺りを見回してもそれらしきものは無い。

「城の外どころか、もうパエルナの外だ」

クリスが呆気なく言った言葉にカインとサーシャは顔を見合わせる。

「さっきの通路は有事の際の脱出口だ。その有事が起きなくなって久しい。誰もが存在を忘れかけているようなもので、我々にとっては都合が良かった」

「成る程、地下を通ってきたわけね」

サーシャはどこか湿った黴臭い通路を思い出し、頷いた。
「で、何処に向かうんだ?」

カインに問われてサーシャは少し戸惑う。まさか仲間のように扱われるとは思わなかった。

「……様子見ながらラビナに戻って、クラウザーさんには報告しようと思ってるけど」

そう答えるとカインは不服な感情を隠そうともせずに眉間に皺寄せる。

「あのなあ、そんな悠長な事してていいのかよ。あいつの所にだって俺達の手配書は行ってると思った方がいい」

「な、ならあんたは勝手に何処かに行けば?私はそういうの気持ち悪いから嫌なの!」

サーシャが反論するとクリスが止めに入る。

「まあまあ、輪を乱すなかれ」

妙に噛み合った会話がくすぐったい。サーシャは顔が赤くなるのを止めようと頭を振った。

「とりあえず今夜の寝床をどうするか、だが私に提案がある。いいかね?」

真剣な顔に戻ったクリスにサーシャは思わず頷いてしまう。

「パエルナとラビナの境に、私の知り合いが宿を経営している。絶対に信用出来る人物なのだが、そこに行くのはどうだろう?」

クリスの提案に訝しい気な顔をしたのはカインだ。

「『絶対』?あんたお尋ね者になったことあんのかよ。知り合い程度でお尋ね者を匿ってくれるお人よしなんているのか?」

「知り合い、というのは語弊があったな。……そいつは私の弟だ」

クリスはそう言うと「あっちの方向だ」と呟き、指差す。サーシャとカインは顔を見合わしていた。





ランタンの光に照らされる店の入り口前、目の前の大男にサーシャは思わず後ずさる。

「やあやあ、兄さん、相変わらず急に来るんだから」

カインが見上げる程の身長に、磨いたように光る頭。丸太のような手足などどれをとっても男はエプロンを着たクリスにしか見えない。

「すまんな、部屋を用意出来ないだろうか」

そう問うクリスと握手しながら弟トーマスはにこにこと笑った。

「大丈夫、兄さんとそこの少年は同じ部屋でいいかい?二部屋しか空いてないんだ」

「俺がこいつと同じ部屋かよ!」

不満をあらわにするカインをサーシャは睨みつけた。

「当然でしょ」

それでも文句を言いたそうなカインの背中を押して一行は宿の中に入る。

一階部分は酒場という基本的なスタイルらしく、カウンターといくつかのテーブルが並んでいた。時間が遅い為か三人ばかりの一人客が別々にグラスを傾けているだけだ。客の様子を見るに「訳あり」の空気を感じる。領土境にあるから、そういう客が集まるのだろう。

「何か食べるかい?」

「頼む」

クリスはカウンター裏へ入って行くトーマスに返事した。

カインがテーブルにある椅子を引きながらサーシャに耳打ちしてくる。

「……でもよ、こういう場合って『弟の方は似ても似つかない美形でした』って展開になるもんじゃないのかよ」

「良かったじゃない、新たな展開を迎えられて」

そう答えるサーシャももちろんカインの言う展開の方が嬉しかったのだが。

「さて、明日からの行動を話し合うとするか」

クリスが合わせた指を動かしながら二人に尋ねる。サーシャは大きく息をはいた。

「さっきも言ったわ。わたしはクラウザーさんの所へ戻る」

「お前なあ……」

文句を言おうとするカインをサーシャは手で制す。

「反対ならここからは別行動で結構。聖杯は手に入らなかったけど遺跡の探索は済ませたもの。依頼料貰えるまでは粘るつもりだから」

きっぱりと言い放つサーシャにカインは真顔で言い返す。

「だから手配書が回ってたらどうするんだよ」

「だーかーら、とりあえず行ってみるの!嫌なら来ないでよ!」

まあまあ、とクリスが手を伸ばした時、カインが再び真顔で言い放つ。

「お前がいないと困る」

思わずサーシャが赤面する横で、クリスが「あらあら」と呟いた。誤解されては困る、とサーシャは赤い顔のままクリスに向き直る。

「あ、あのね、こいつは自分のことしか考えてないアホなのよ!」

立ち上がらんばかりに興奮するサーシャをクリスが「まあまあ」と手で制した時、トーマスが湯気を立てた料理を運んできた。

「余り物になっちゃうけど、味は保証するから」

にこやかな顔で大男が置いたのはトマトソースのパスタ。お腹の空いていたサーシャは思わず口を閉じて凝視する。暫し顔を見合った後、三人は小皿を奪い合うようにしてパスタを胃に運ぶ作業に入る事にした。

「で、聖杯はどうなったの?」

サーシャが尋ねるとクリスは少し間を置いた後に答える。

「パエルニスタ王城内にあると思われる」

「思われるって、わかんねえのかよ」

眉間に皺寄せるカインにクリスは大きく頷いた。

「何も知らされなかった。私には何も。君らをあんな無理のある罪状で拘束した理由もね」

その返事にサーシャはクリスがなぜ自分達を逃がそうとしたのか、今いる立場を反故するような真似をしてまでここにいる理由が窺えた、と感じていた。
隣りの部屋から聞こえる騒がしい物音とカインの「うるせえ!」という怒鳴り声にサーシャは壁を睨む。
「仲良いわね」
そう呟く彼女には、隣りの部屋ではクリスの毎晩の祈祷が始まったことによってカインが激怒した、という事実は知りようがない。
丈夫な革で出来たリュックにぱんぱんに詰まった荷物を整理すると、一度大きく息をつく。腰掛けたのは薄いマットレスとぎしぎし煩いベッド。この状況で贅沢言える立場でもない、とサーシャはもう一度息を吐いた。
「アレキサンドラ」
サーシャが呟くように名前を呼ぶと、光の粒子が集まりだす。徐々に無数の粒子が暴走するかのようにうごめき、彼女の手の中で形作られていくのは見慣れたロングボウだった。
「悪かったわね」
そう言って手元を撫でてやる。答えは無いが『彼女』がここにいる、というのが許された証だ。
「明日から忙しくなるわよ。とりあえずラビナでは戦闘にならないといいけど」
そう言いながらサーシャは弓の弦を軽く弾いた。軽く響いた音が『アレキサンドラ』からの返答に聞こえた。
「しかし馬鹿なのか鋭いのか分からない男ね」
サーシャはもう一度壁を見る。
戦いにおいては感嘆の連続だったが、日常においては呆れる程非常識な男。幼い……といえばそうかもしれない。サーシャに固執し始めた理由も確固たる理由があるというよりも単なる『勘』なのだろう。そう感じた。
「アルケイディア出身ね……」
嫌な予感がする。文明国では最大の国家。領地、人口、発展、文化、どれをとっても世界のトップといっていい大帝国。それだけに反発も多い国だ。彼が何らかの目的を持ってアルケイディアから来た使い、という可能性は低そうだが、あの国の名前が出たという事が何かの予感を感じさせたのだ。
一度枕に身を預けると、天井を仰ぎ見る。
依頼料の為にラビナに戻る、と決めたもののサーシャは不安に襲われていた。そもそもあの気味悪い領主が聖杯を欲しがったのは何の為なのだ?城に冒険者を集めていたのは何の為?
「戦争……?」
自らの声にサーシャは飛び起きる。一度は否定した考えだったが、改めて思い浮かべても戦争の準備としか言えない状況だったではないか。ただやっぱりラビナとパエルナの戦力を比べれば、ラビナ側が元々の兵士に加え傭兵をかき集めたとしてもパエルナの兵士とは単純に数だけでも桁が二つは違うはずだ。
それをひっくり返す要素として聖杯を求めていたのだとすれば、サーシャ達はアダム・クラウザーにとって「飛んでもない事」をしでかしたことになる。聖杯は今やパエルナにあるのだ。
「……やっぱり戻るのは危険かもしれない」
今更になって汗が吹き出る自分に呆れながら、サーシャは無理やり寝に入ることにした。

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