tiny,tiny,tiny
3day

耳に届く喧騒と振動。目を開けて、勢いよく起き上がる。がたがたと身体が揺れるのはここが電車の中だからと理解し、僅かに光が漏れていたブラインドを引き上げた。

「……薔薇?」

レールの回りすべて、辺り一面に薔薇が咲いている。赤い薔薇がどこまでも続いていて、その圧倒的な景色に目が離せない。

「まひる? 目が覚めたんだ」

引き戸が開く。綺麗な薔薇とは対象的に、今わたしの座っている二人掛けや扉は古く傷んでいた。個室とは言い難く、立て掛けの悪い戸を無理やり閉めた少年はわたしの向かいに腰を下ろした。

「食欲は? もう少ししたら着くから」

あの部屋で見た少年を、初めて、陽の光があるところで見た。透き通るような金色の髪の毛。青みがかった双眸。白い肌。まるで、どこかの貴族のような顔立ちに思わず目を見張る。

「まひる? 聞いてる?」
「……えっ、うん。食欲は、ない。平気」
「そう? あ、気分はどんな感じ? そろそろ効き目が終わる頃なんだけど……」
「効き目? なに、なんのこと?」




- 3 -

prev

tiny,tiny,tiny
ALICE+