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教室を出た先生を追いかけるように、みんなで校庭に出た。校庭に出て、サッカーのゴールを謎に退ける先生。私たちはそれを不思議そうに見つめる。

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますが」
「...何よいきなり」

校庭の階段付近に立っていたイリーナ先生に、殺せんせーは触手を向ける。

「あなたはいつも仕事をするとき、用意するプランは一つですか?」
「いいえ、本命のプランなんて思った通りに行くことの方が少ないわ」

不測の事態に備えて、予備のプランを綿密に作るのが暗殺者だ。ビッチ先生はそういう。

「では次に烏間先生」

次に殺せんせーは烏間先生に触手を向けた。

「ナイフ術を生徒におしえるとき、重要なのは第一撃だけですが?」
「...第一撃はもちろん最重要だが次の動きも大切だ」

そのあとの第二撃、第三撃をいかに高精度で繰り出されるかが重要だ、と。

結局先生が言いたいことは、なんなのか。なんとなくだけど、私はわかったような気がする。

「先生方のおっしゃるように、自信を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。対して君たちはどうでしょう」

殺せんせーは、くるくる回りながら話し出す。

「俺らには暗殺があるからそれでいいや。と考えて勉強の目標を低くしている。それは...劣等感の原因から目を背けているだけです」

その言葉に、私は少し俯いた。

数学や物理、化学だけできればいい。

それ以外ができなくたって、私はこの三つ、特に数学は隣に人を並ばせないほど自信がある。だけどそれは、数学以外勝てるものが私にはないということを示していて。

それが、私のE組に落ちた理由でもあるから。

「そんな危うい君たちに、先生からのアドバイスです」

第二の刃を持たざる者は暗殺者を名乗る資格なし!!

どんどん早く回る先生の周りに竜巻が出来上がる。
周りの草を巻き込んで、先生の動きが止まった時には、あんなに草がボーボーに生えていた校庭が綺麗さっぱりになっていて。

「先生は地球を消せる超生物。この一帯を平らにするなど容易いことです。

もしも君たちが自信を持てる第二の刃を示せなければ、相手に値する暗殺者はこの教室にはいないとみなし、校舎ごと平らにして先生は去ります」

先生の言葉に渚くんが、クラス全員の疑問を口にする。

「第二の刃、いつまでに...?」
「決まってます、明日です。

明日の中間テスト、クラス全員50位以内を取りなさい」

そんな無謀なことを平然というこの先生に、私は苦笑を漏らした。

「君たちの第二の刃は先生がすでに育てています。本校舎の教師たちに劣るほど、先生はとろい教え方をしていません。
自信を持ってその刃を振るってきなさい。仕事を成功させ、恥じることなく笑顔で胸を張るのです。自分たちが暗殺者であり、E組であることに!!」

明日の中間テスト。私たちは今までの私たちとは違うということを見せびらかすのだ。
その自信は、今。先生からもらうことができた。

かすかに震える拳は、武者震いなのかはわからないけれど、私はこれを、武者震いと呼ぶんだとわかった。


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