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「この喫茶店なら、一番良い角度で入れるためには...」


昨日の出来事から、俺なんかのために菅谷や奥田、新稲までもが手伝ってくれることになった。
千葉と速水もわざわざこのために来てくれて。感謝の言葉でいっぱいだ。


新稲が俺たち全員を連れて、喫茶店の前に行く。
多分だけど、あの女は瀬尾と二人でこの喫茶店に入るんじゃないか、といった。
せっかく俺が見つけたお洒落な喫茶店だけど、俺ときたことは言わないで、自分が見つけたんだと嘘つくんだろう。
あの女のやりそうなことだ。


「千葉くん速水ちゃんの持ってきた銃の長さがこれくらいだから...ここから一番近い距離を目測で測って...」


新稲がよく分からない言葉を何度も言っている気がする。
俺たちは全員ぽかんとしながら新稲を見つめて、頭の中で何とか理解しようとする。


えーと、この喫茶店の席からこの家の距離を目測で...目測?


「だいたい450mぐらいかな。そこから仰角が求められるから...」


人差し指をまっすぐ前に指す。そしてその指をスーッと上に上げていって。
それをたどるように俺たちも顔を上げていけば、ある一点の部屋をその指がさした。


「...あそこから撃つのがちょうどいい」


新稲、そこ、民家なんだけど!?





「まじごめん。民家選んじゃってまじごめん」
「いいっていいって」
「矢田っちたちがいてよかったよほんと」


自分で計算してなんだけれど、民家を選ぶなよほんと。
はぁ、と何度もため息をついていれば、杉野くんに肩をトントンと叩かれる。


「それにしても、数学とか物理に強いのは知ってたけどあそこまでとは思わなかったわ、俺」
「あぁ、俺も思った」


双眼鏡を覗きながら渚くんたちに合図をして、愛美が調合してきた下剤を千葉くんたちが銃で撃って入れた。
その一連の行動を眺めながら、菅谷くんが杉野くんの言葉に相槌を打ちながら適当に紙にいたずら書きをしている。


「先生の言う新稲の空間処理能力っていうのがアレなのか?」
「さぁ...?ただ数学と物理が好きなだけなんだけどね、私」
「まずそこがすげーもんな」
「俺も考えらんねーわ」


数学は楽しいのに、どうしてかみんな好きになろうとしないんだよね〜おかしい。
さっきみたいな計算も、数学の力があれば誰でもできることなのに。
首をかしげながら、ふむ、と考えていれば、やろうとしていた復讐は終わったようで。
私たち待機組もみんなで外に出る。


「強い弱いは一目見ただけじゃ計れない。それをここで暗殺を通して学んだ君は、この先弱者を簡単に蔑むことはないでしょう」


前原くんの肩に触手を置きながら、そう説く先生。
私も、強い弱いじゃなくて人を判断できるだろうか。そう、なれるのだろうか。


「あ、やばっ俺これから他校の女子と飯食いにいかねーと。じゃあみんなありがとな、また明日!!」


そう言って爽やかな笑みを見せて立ち去る前原くん。


「うん、前原くんらしいね」
「そうだけど!!」


私の言葉に、ひなたが地団駄を踏みながら叫んだ。



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