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ある日、体育の先生として現れたのは烏間先生ではなく、少し図体の大きい男の人だった。
その人は、お菓子やケーキやらをたくさん持ってきて私たちに食べていいぞ、と人のいい笑顔で言った。


「もので釣ってるだなんて思わないでくれよ。お前らと早く仲良くなりたいんだ。それには...皆で囲んで飯食うのが一番だろ!!」


烏間先生の補佐として働くことになったらしい、その男性の名前は鷹岡さん。
ブランド物の甘いお菓子に目がくらみ、みんな一斉にそれを食べ始める。


「同僚なのに烏間先生と随分違うっすね。なんか近所の父ちゃんみたいですよ」


そういったのは木村くん。


「はははいいじゃねーか父ちゃんで。同じ教室にいるからには...俺たち家族みたいなものだろ?」



そう言って、三村と莉桜の肩を組む鷹岡さん。
私はどうしても、その言葉に納得がいかなくて。
何が家族だ。何が父ちゃんだ。同じご飯を食べたらどうしてそれが家族になれるというのだ。


周りの皆はどう思っているのだろう。あの胡散臭い鷹岡と言う人を快く受け入れているのだろうか。


「どう思う?」
「えー私は烏間先生のほうがいいなー」


千葉くんの言葉にひなのがそう答える。
ひなのは烏間先生大好きだからね。


「新稲、お前随分と機嫌悪いな?」


そう聞いてきたのは寺坂君。わざわざ私の方に近付いて聞いてくるということは、よっぽど機嫌が悪く見えたのか。

私はその言葉に少し首をかしげて、幾分か迷った後に首を縦に振った。


「あいつ、きらい」


私が一言そういえば、そばにいた愛美が驚いた顔を見せてこっちを振り向く。


「サチちゃんが...こんなに嫌悪感を表すのは初めてですね...?」
「そうかもね」


きっと、冷たい目でもしているのだろう。
一瞬愛美がビクッとしたのがわかった。

怖がらせたいわけじゃないんだ、ごめん。そう一言言って、笑顔を見せればホッとしたように笑顔を見せてくれる愛美。

寺坂くんはそんな私を一瞥した後、また元いた位置に戻っていった。


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