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ミーンミーント鳴く蝉の声に、じりじりと蝕んでくる太陽の光。

私たちは例に漏れず全員机に突っ伏したままグダーッとしていた。


「アッヂー...」
「地獄だぜ...今日びクーラーのない教室とか」
「だらしない...夏の暑さは当然のことです!!温暖湿潤気候で暮らすのだから諦めなさいちなみに先生は放課後には寒帯に逃げます」
「ズリィ!!」


今は地理の時間だ。殺せんせーまでもが教卓の上でぐったりとしている。
私はそれを、湿布の貼っていない頬に手のひらを置いて、肘を机につきながらじーっと見やる。


「でも今日プール開きだよねっ」


ひなののその声に木村くんが容赦ない言葉を述べた。


「人呼んでE組死のプール行軍」


そんな恐ろしい名前が付けられているとは...去年の秋にこのクラスに落ちたから、夏を過ごすのは初めてなんだけれど、そんなものを聞いたらプールなんて行きたくなくなってしまう。

「仕方ない、全員水着に着替えてついてきなさい。側の裏山に小さな沢があったでしょう。そこに涼みに行きましょう」


そう言って、殺せんせーはうちわであおぎながら外を指差した。


全員水着の上にジャージを着て、道無き道を歩いていく。
あんなに運動なんて大嫌いだったのに、こうやって身軽に動けるようになるんだもんな、人の成長は恐ろしい。


「サチちゃん、もうほっぺは大丈夫ですか?」
「ん?うん、大丈夫だよー痛みも引いてきた。沢で水遊びぐらいなら出来るでしょ」
「よかったです」


そうニコニコ笑う愛美の頭を撫でて、先生たちの後ろをついていけば、そこにあったのは沢なんてものじゃなかった。


「小さな沢をせき止めたので水が溜まるまで20時間!!バッチリ25mコースの幅も確保、シーズンオフには水を抜けば元通り。水位を調整すれば観察できます」


殺せんせーのその言葉にじっとそれを見やる。
まるでリゾート地のような椅子にテーブル、そしてプールのように区切られているレーン。

まるで屋外のプールだ。


「制作に1日、移動に1分、後は1秒あれば飛び込めますよ」


その言葉に全員ジャージを脱ぎだし、一斉にプールへと飛び込んだ。


「新稲さんはしばらくは入れませんね」
「...はーい」


脱いだジャージをもう一度着込んで、プールへと入るみんなを見やる。


「サチも早くそれ治してよ」
「あともう少し待ってー」


プールへと飛び込んだ莉桜の言葉にそう返す。


「サチちゃんが入れないのなら私もそっちで...」
「愛美はゆっくりプールで涼んでおいでー治したら一緒に遊ぼ」
「はい」


せっかくだし、リゾート地にあるような椅子に座ってぼーっとしてようかな。

プールに入ってわいわい騒いでいるみんなの姿を見ながら、狭間さんの隣の椅子へと座った。


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