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新稲の叫ぶ声が聞こえたと同時に、たくさんの人が水に飲み込まれていく。
しかし、ほんのすこし前に聞こえた新稲の言葉通りとっさに岩や何かに掴んでいる生徒もちらほらといた。


「(何者かがプールの堰を爆破した...!!)」


考えるよりも先に触手を動かさねば。
この水流の先は険しい岩場がある。このままでは溺れるか落下でクラスの何人かが死んでしまうだろう。触手を伸ばす。一人一人の腰をきちんとつかみ岩場に引き上げる。


「(新稲さんが察しなければもっと被害が大きくなっていたところでした...!!)」


膨れ上がる触手はこの際どうでもいい。
今は何よりもクラスのみんなを。そして何よりも、この事態にいち早く気づき声を上げてくれた新稲さんを助けることが大事だ。


「新稲さん!!」


彼女の名前を叫べば力なくも伸びる腕に、自身の触手を巻きつけて勢いよく近くにあった木の枝に乗せる。
これで全員救助ができたはずだ。

そう安心したのも束の間、自分のものではない触手が自分の触手に巻きつき、そのまま水の中へと引き下ろされる。


「はい、計算通り。久しぶりだね殺せんせー」


気づけば、ある一点に立っていたのは以前教室にやってきたシロという保護者に、自分のクラスの生徒であるイトナ。
自分は罠に嵌められたのだと、ここについてやっと気づいたのだった。



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