2

「早速暗殺の方をはじめましょうか。トップの四人はどうぞ4本、ご自由に」


殺せんせーが足を差し出す。
その触手それぞれには予約済みという旗が刺さっていた。
私はそれを見ながら右のほうに座っている寺坂くんに視線をやる。
彼はあの時のことをきちんとわかってくれたようで、こくりと首を縦にふると村松くん吉田くん狭間さんの三人を引き連れて前へと行った。


「おい待てよタコ。5教科トップは4人じゃねーぞ」
「四人ですよ、寺坂くん。国・英・社・理・数...」
「はぁ?アホぬかせ」


寺坂くんが自信満々にそのテスト用紙を教卓へと並べた。


「5教科っつったら、国・英・社・理。あと家庭科だろ」


4つ綺麗に並ぶ100という数字。
寺坂くんはもしかして人生初めての100点なんじゃないだろうか。


「ちょ、待って!!家庭科のテストなんてついででしょ!?こんなのだけ何本気で100点とってるんです君たちは!!」
「だーれもどの5教科とは言ってねーよな」
「クックック、新稲の悪知恵のおかげね」
「悪知恵ってひどいなー...」


狭間さんの言葉は苦笑を浮かべる。
数学を解く上で必要不可欠なことは、問題文を誤読しない、だもん。先生は必ずしも国英数理社から、とは言っていなかった。

そう口にして、隣に座るカルマくんに、ね?と目線をやれば、彼はいつも通りの意地の悪い笑みを浮かべて攻撃をする。


「ついでとか家庭科さんに失礼じゃね殺せんせー?5教科の中じゃ最強と言われる家庭科さんにさ」
「そーだぜ先生約束守れよ!!」
「1番重要な家庭科さんで四人がトップ!!合計触手8本!!」


クラスみんなであれこれと口にする。
合計8本もの触手を同時に撃つことができる。なんだこのハンデ、すごすぎる。


「それと殺せんせー、これはみんなで相談したんですが、この暗殺に今回の戦利品も使わせてもらいます」


A組と賭けをしていたもの、それは沖縄離島リゾート2泊3日。
最高の賭けの商品だ。沖縄に行けるなんて嬉しすぎる。


終業式も無事終わり、夏休み前最後のHRが始まる。
殺せんせーが教卓に立って一学期最後の話をしている。


「触手8本の大ハンデでも満足せず、四方を先生の苦手な水で囲まれたこの島も使い、万全に貪欲に命を狙う。

正直に認めましょう。君たちは侮れない生徒になった」


ぽりぽりと頭を掻きながら言う先生。
その言葉は、たとえ数学ができるね、やらなんやらと褒められる言葉よりも何よりもうれしい言葉で。


「親御さんに見せる通知表は先ほど渡しました。これは標的から暗殺者への通知表です」


そして先生がマッハで描き切った紙がクラス中に散りばめられる。

大きく書かれた二重丸。


最高の評価だ。


「1学期で培った基礎を存分に活かし、夏休みも沢山遊び、沢山学び、そして沢山殺しましょう!!暗殺教室基礎の1学期、これにて終業!!」


そして楽しい楽しい夏休みが、始まる!!




prev next


ALICE+