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夏休みはとにかく勉強と暗殺の特訓の繰り返しだ。
一人一人への射撃やナイフ術などのアドバイスをし、暗殺のプロでもあるロヴロを呼び、的確な助言をもらうためだ。

その中でも特に、千葉くんと速水さんの腕が実にいい。
これは俺もそう思っていることだが、ロヴロも思っているらしい。

本職にそう言われるぐらいなのだから、きっといい結果が得られるだろう。


「そうだな、こういう場合はすぐに対処できるようにしようか、律」
「そうですね、マスター。ではこのプログラムはどうしましょうか」


分厚い専門書を広げて律の本体を動かしながら会話をするのは新稲サチ。
齢15にして、数学の知識は大学以上のレベルの彼女の姿を見やる。
彼女は今回の暗殺の計画を実行するまでに、ある程度律の計算能力をあげようと考えているらしい。
運動神経がそこまで良くはない新稲さんなりの、クラスへの貢献がこれのようだ。

俺はそっちの方は専門ではないため良く理解はできていないが、数学者の娘だという新稲さんの頭は一級品。
誰よりも状況を察知するのに長けており、さらには空間を客観的に見て処理をする能力がある。

この能力は、頭のいい人間が持って初めて発揮される力だ。
団体で暗殺を行うこのクラスにとって、絶対にいつか必要とされるもののはずだ。


「...彼女のあの能力はいいな...暗殺のチームを組むとしたら、必ず彼女を指揮官として雇いたい」


そういうのはロヴロ。それは暗殺だけではなくとも、たとえ防衛省だとしても欲しいと思う力であるため、同意の意を示そうと首を縦に振った。


「彼女は数学者の娘らしい」
「ホゥ...いい脳を持っている」


こればかりは銃の扱いかたやナイフの扱い方から学べれるものではない。
そして一朝一夕で身につけられるものでもないため、新稲さんに一任されている。


運動はよくできないけれど、頭で私は暗殺をしたい。


そう言っていたのはいつだったか。
彼女のその言葉に標的のあいつも、嬉しそうに笑っていたのを思い出した。



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