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夜の9時。
学祭が無事に終わり、今は全員でのクラス会をした帰りだ。
今年初の、そして最後の花火を皆として、全員で学祭お疲れ様ーとかけ声をあげた。高校に入って初めての学祭は、大成功を遂げて終わった。
「(楽しかったなー…)」
学祭は喫茶店をした。
ウェイトレスの格好をして、注文を受け付けて、めんどくさがりな自分がここまで頑張れたか、と1人笑みを浮かべる。
来年はもっとこうしたい、あぁしたい。そんな思いでいっぱいの中、自分の家であるマンションに着いた。
エレベーターのボタンを押して待つが、全くおりてこない。自分の家は3階だ。なら階段で行くか、と回れ右をした。
チーン...
ベルの音が鳴り響く。エレベーターがついたらしい。
丁度良かった、ともう一度エレベーターの方を向き、乗り込もうとしたその時。
「...?」
お腹にわずかな痛みが走った。
なんだ、と思いそこ「手をやると、ヌメっとした感触が。
「…え?」
できるだけゆっくりと後ろを、エレベーターの方を向くと、そこには深くフードをかぶり、マスクをした男が包丁をこちらに向けていた。わずかに鈍く光るそれには、赤い液体が。
私の血。
「...!!」
逃げなきゃ。
そうは思うものの、やっと自覚した自分のお腹の異常な痛みに足が動かない。それどころか立てない。
床にへばりつくように出口へ向かおうとするが、その男は私の背中に馬乗りになった。
もう一度振りあげるられる包丁。
腕を必死に伸ばし苦し紛れにも息を吸い込み助けを求める声を出したかった。
「...っ助け」
最後まで言えなかった言葉。
もっとやりたい事があった。もっと頑張りたい事があった。こんな所で死にたくなんてない。
涙と痛みで、私は目を瞑った。
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