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目を開けると、私はベッドの上にいた。
全く身に覚えのない天井にシーツ。一体ここはどこだ、病院か?私はなんで、生きているんだ?

「...」
ゆっくりと身体を起こして違和感を探る。視線を巡らして、わかること。

ここは病院ではないらしい。
病院なら服は病院の服だろうし、あんなに血を流したのだから点滴だってしているはずだ。なのに、私は下着であるキャミソールに、お腹に包帯が巻かれているだけ。

存外に扱われているにも程があるだろう。




「起きたか?」




男の人の声。若干低いが、それでも頭にすんなりと入って来る声の方へと私は顔をむけた。

「結構傷深かったんだぜ。よく1日で目、さめたな」

そこにいたのは、日本人ではなかった。
金髪で、アイスブルーの輝く瞳を持つ、所謂イケメンと言われるたぐいの人。あまりにも流暢な日本語に、思わず目を見開いた。
まずはそんなことより、ここがどこなのかを聞くのかが大事だろう。口を開いて、私は彼に質問をした。

「ここはどこでしょうか…?私は一体?」
「あ?お前、俺の店の前で倒れたんだ。俺に用があってあそこにいて、で、マフィアとかに襲われたんじゃねーのか?」

マフィア?
言うなら普通にヤクザじゃないのか?

「普通に家に帰ろうと思ったんですけど...」
「は?ここ住宅街じゃねーけど?」
「...え?」

その人に言われてベッドの横にある窓の外を見ると、確かにそこは住宅街ではなかった。
むしろ、もっと暗い、なんていうのか、私が普通に生きていたときでは絶対に入りたくない場所。路地裏、とでも言えばいいのか。

「...あの、あなたは?」
「エールだ。お前は?」
「...ヨル・飯沢」
「ヨルか。で?お前の用事はなんだ?」

ていうか、あんなに怪我しといてこんなにすらすらと私は話せるものなのだろうか?異常、としか言いようの無い今の自分に、不気味さえ感じてしまう。
そして、それがさも当然のように話しをすすめる、このエールとかいう男にも。

「その前に、質問いいですか?」
「おう」
「ここって、住所は?」
「住所?流星街のすぐ隣にあるから別に住所なんてものはない」
「流星街?」
「お前そこ出身じゃねーの?」

いいえ、日本ですが。

「その、流星街ってなんですか?」
「なんでも捨てていいとされる街。例えそれが人間でも」

これは完璧に日本である可能性が低くなってきた。
そもそも、なんで自分はここにいるんだろう。
普通に考えてあの傷ではもう死んでいるだろうし、例え生きていたとしてもこんな風に話すことはできていない。最終的には流星街。なんでも捨てていい街!?

ふざけてるにもほどがある。

でも、これが嘘であるという保証がないし、なによりこの窓の向こうの不気味さが、日本だと伺い知る事ができないというのも事実。

「そこの出身戸籍もねーから、大体マフィアとかに雇われてんだけど。お前、それで傷作ったんじゃないのか?」
「いえ..」
「...ふ〜ん?まぁ、念も使えてないみたいだし...てか、使えないのになんでここ来れんだよ?」
「なんの話しですか?」
「...こりゃ本当にわけわかんなくなってきたな」

はー、と溜め息をつくエールさん。
こっちだって溜め息つきたいわ!!なんて言えないし、もうどうしようもない。

ここは、日本ではない。

そう確信するとなると、なぜこの人と私はこうも会話が出来ている?この人が言った『ネン』ってなんだ?
聞いたこともない。そこでわたしは、鎌をかけてみた。

「あの、日本語、お上手ですね」
「日本語?お前、さっきからハンター語喋ってるけど?」

ここは日本ではない、どころか、私が住んでいた世界じゃない。


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