「...クロロか」

隣でエールさんがそう呟く。
前に座っているシャルナークさんも少しため息をつきながら、後ろを振り向いた。

「話は聞かせてもらったよ、エール」
「お前いるなら声かけろや」
「大事な話をしているみたいだったからね」

いやそうな顔をする二人に、私もなんとなくめんどくさい雰囲気を感じ取った。クロロさんは扉をゆっくりと閉めてコツコツと音を鳴らしながらこちらに近づく。一切ならないドアのベルの音に、なんとなく怖さを感じた。

「どうりで、イリネ地方なんかマイナーな、財政破綻も甚だしい地域の情報が詳しいわけだ」

クロロさんはそう言うと、どかっとシャルナークさんの隣に座った。

「自分と同じ様に、異世界からきた人間の情報を集めている、そういうことだな?」
「...はい」
「今まで見つける事ができた情報は?」
「イリネ地方だけです...」
「ここ三年ずっとここで調べてるけどな、俺も見つけるのが難しい」
「ふむ...」

ふとシャルナークさんを見ると。頬杖をつきながら、私の方を見ていた。

「...なんでしょうか?」
「いや...?念、習得したんでしょ?」
「はい」
「どんな能力にしようとしてる?」
「...情報を集める事のできるような、そういうものを...」
「ふーん...」

きっと、今目の前に座っている二人の頭では、いかに私を有効的に使うことができるか、その計算が巡らされていることだろう。

そして隣に座るエールさんの頭でも、私をダシにして、自分が掴めない情報を、旅団を使って得ようと考えているはずだ。

今、この場では大量の計算が行われ、いかに自分が得するのか、その打算的な策略が巡らされている。

全員無言で、それでも顔には不信感や危機感を表さずに。

私も無言のまま、どうやって元の世界に帰れるか、どうやれば悪名高いこの幻影旅団達を使うことができるのか。それだけを考えた。

壁にかかってる時計の針の音が何回聞こえたかわからない時。クロロそんな口が開いた。

「...分かった。手を貸そう」
「うん、いいよ。俺も時間があれば探してみる」
「契約成立だな?」
「あぁ」

そう笑いながら、エールさんとクロロさんは握手を交わす。

もう一度私は、自分の名前を口にして、お願いします、帰らせて下さい、と頭をさげるのだ。
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