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お湯が溜まって俺はコブラに風呂場へと連れてかれ、さすがに1人で出来ると言って扉を閉めた。全てを脱ぎシャワーを頭から…今日あった出来事を忘れるように流す

涙と共に流れる水がやけに冷たかった





風呂から上がると換気扇の側でタバコを吸っているコブラを見つけた。遠くを見つめるようなその目がかっこ良くて…また魅入ってしまう


「…もういいのか」

「え、あ…あぁ」


フー…と煙を吐き出して火を消したコブラは、俺を見ては近づき腕を引っ張る。なんやと言う前に床に座らされた。そしてすぐにガタンと机に音を立てながら救急箱を置き、包帯やら絆創膏を取りだす


「じ、自分で…」

「…」


俺の言葉なんて聞こえてないみたいな態度で物を出していく。これは何言っても聞いてはくれないな、そう思ったから俺は口を挟むのはやめた


「…」

「…」


無言で絆創膏を貼ったり包帯を巻いてるコブラの表情は重く険しかった。それもそうやな、こんな傷見たらそうなるだろう…それでも手を止めず、結局最後までやってくれた。少し雑に見える包帯の巻き方に、いつものコブラだと安心させてくれる


「…ありがとな」

「…」

「コブラがいてくれて…よかった」


これは本心や

コブラの顔を見ただけでモヤモヤしたものがスッと消えていった。雨宮のこと…やはりあれは錯覚だったんだと、俺が好きなのはやっぱりコブラや…


「…ダン」

「…ん?」


低い声が俺の名前を呼んだ
顔を向けると真剣な眼差しが目に入る


「お前は…死ぬなよ」

「…え?」

「ノボルの女みたいに…死ぬな…」


それは、俺が自殺すると思って言うてるんか…


「…死なへん」

「…」

「きっと死ぬ時はお前より先やけど、まだ死なへん…絶対」

「…ダン」


眉間に深くシワを寄せながら俺を覆うように…抱きしめた
温もりが温かい…ヤバイ…心臓がすげぇ鳴ってる


「コ、コブラ…?」

「死なせねぇ…」


キツく抱きしめるその腕は、とても熱く、力強くて…胸が張り裂けそうだ



「何があってもお前を守る。もう2度とアイツには触れさせない…絶対に、守ってやる」

「…!それ…って」




それって…まさか…なぁコブラ…っ










「"仲間"を守んのは当然だ」








……、…ははっ



「…、ありがとな…コブ、ラ…っ」



やっぱり、そうだよな…仲間だから、だよな…

分かってはいたんや
何を期待したんだ俺は、バカだ…

お前に気がないことなんて
そういう情に流されないことなんて

分かっていたはずなのに…っ


「…泣くんじゃねぇ」

「…っ、あほ、泣いてへんわ…ぼけ…っ」

「下手くそな嘘つくな…くそ、ぜってぇ許さねぇ」



あぁどうしよう…身体中の痛みより心が痛い



俺は泣くのを止められなかった
コブラが優しく背中をさすってくれたけど
その反動でまた涙が流れる


コブラはきっと
アイツにヤられたことで
泣いてんだって思ってるんやろう



雨宮…お前に謝るつもりないけど…すまん。コブラはお前を見つけたらぶっ潰そうとするやろう…俺がこんな事を思うのはおかしいかもしれないが、どうか…山王のメンバーには見つからない事を願う







"お前さ、俺のもんになれば?"

"俺のもんにするって決めたから"



…もし、いつかこの闘いが終わったとして



それでも俺が必要やったら


もう一度…言ってくれ








心も体も…今の気持ちなら…


あげられそうだから










止まらない涙は



外の土砂降りの雨のように



降り続いていた





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