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やめろ









『はぁ...っ、ん、はぁ...』








…もうやめてくれ







『一八...っ、』








呼ぶな







『かずや...早く』







やめてくれ
俺の名前を呼ぶな









『俺のもんになれよ』





「っうぁ...っ!!」





勢いよく起き上がる体
脂汗をかいて俺は目が覚めた



「はぁ...っ、はぁ...っ!」



ポタリと落ちた汗は手の甲を濡らし
そこで手が震えてることに気づいた



「...っ、くぅ...っ、」



噴き上がる汗と一緒に涙が溢れて布団を濡らした


何時になったらこの夢は終わる
早く...お願いだから










あの雨の日から2ヵ月は過ぎた。2ヵ月もあればSWORDは色々変わっていく。例えば俺ら山王が1度解散し...ノボルが帰ってきてまた復活したとか。家村会が動き出したとか...色々


でも俺の心に残るあの出来事は
今になってもこびりついている


アイツに...あの雨の日に雨宮広斗に抱かれたこと、そして...コブラに想いが無いことを痛感させられたことだ



いつか何もかも落ち着いて...アイツがまた言ってきたら考えようと思ったけど…





でも俺はやっぱり
コブラが好きやからここに居たい



そう思うようになってからアイツにあの日抱かれた夢を毎日のように見るようになった。しかも優しく抱かれるんや...これほどキツイ事は無い


「夢やない、これは夢やない...クソッ」



もう現実なんや
覚めろよ
あんなこともう二度と...っ








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店を開く頃にツインタワーがやってきて店を開けると小さい子供たちが中に入って駄菓子やらおもちゃ付きのお菓子を手に持ってどれにしようかなんて悩んでて...平和やなって思う


テッツ「あ!ダンさーん!」

ダン「ん?...おぉテッツか」


店の前を通ったテッツが話しかけてきた
チハルがいない、珍しく1人やん


テッツ「これからITOKANに行くんすけど(チラッ)…お仕事頑張ってください♪」

ダン「くそ、お前休みやな!羨ましい!後で行くわ!」

テッツ「待ってますよー」


そう言って写真を撮って行きやがった。あれまたイン...なんとかってやつに載せるんやろ...ったく


「「おい仕事しろよ!」」

ダン「しとるわ!!なんやったらお前らよりしてるわ!」


ツインタワー2人に煽られ商品チェックする俺、一応店長やぞ!


ダン「おい、レジばっかに立っとらんでその商品カゴ入れろ。点検日やねんから」


毎週土曜日は商品の点検日。在庫チェックと入荷商品を点検せなあかんねん。やから毎週土曜日の夜はITOKANや小竹には寄らず昼間の内に飯食いに行ったり仲間に会ったりするんや


押上「おい!ウチらが暇してると思ってんのかよ!」

ダン「(怖っ!)お、思ってへん、思ってへんから」

芝「つかさっきから早くITOKAN行きてぇみたいな顔しやがって」

押上「ウチらもITOKANに早く行きたいんだよ!」

芝「順子さんに話があんだよ!」

「「文句あんのか!」」

ダン「分かったから!はよ手を動かせ!」



...なんでこう
黙って仕事してくれんのやろ



お昼近くになって先に2人を行かせ、ある程度片付けた後、俺もITOKANに向かうと何故か苺美瑠狂にクソクソ言われ、テッツがまた写真撮ったりコブラがたまたまいたけど直ぐにトイレに向かってった。直美はずっと笑ってるし、テッツも結局帰ったし。なに、どういうことなん?

よく分からんまま椅子に座るとコブラがトイレから出てきて俺の隣に座った


コブラ「...はぁー」

ダン「...大丈夫なん?」

コブラ「...あ?何が」

ダン「さっきトイレ行ったやん」

コブラ「...アイツらがクソクソうるせーからだ」

ダン「いや、意味分からんけど」


まぁいいや!あー腹減った...
カレー...食いたかったけど
なんかさっきのクソクソ聞きすぎて
食いづらいからやめよう


ダン「直美ー」

直美「はいダン。パンケーキ」


...いやいやいや


ダン「...まだ頼んでへんし、つかオムライスが良かったんやけど」

直美「食え」

ダン「う...っ、...はい」

コブラ「...くくっ」


ほんまにどこの女も怖い...
出された手前、食べなきゃ殺される...
仕方なく食うけど...やっぱ美味い
でも腹の足しにならん


直美「そういえばダン、今日店に来ないんだろ?」

ダン「ん?おー仕事や」

直美「毎週あんたも大変だね」

ダン「やらなアカンからな」

コブラ「...どうせ売れねーだろ」


お、コラ
今カチンときたで!


ダン「...ええんやで?カップケーキもマフィンも入荷せんでも」

コブラ「!...テメェっ」


甘党なコブラは週3回のペースで甘いものを買っていく。やから俺の入荷しない発言は意外と効果的。直美と2人でクスクス笑えばコブラがギッ!と睨んで俺のパンケーキ食い始めた


ダン「あー!おまっ!コブラ!!!」

コブラ「うっせぇ(モグモグ)」



飯食われたことより
マジか...か、関節キス...っ
嬉しい...って、あかん!
顔に出すな俺!


ダン「、も、お前なぁ...!」

直美「また新しいの作ってやるから静かにしろよ、代金は貰うけど」

ダン「俺一口しか食ってへんし!横暴や!」

「「ははっ」」



俺のを全部平らげたコブラは満足そうな顔で仕事に戻ってった。皿に残ったフォークがやけに輝いてるように見える

別に男同士、異性でも関節キスなんて何でもないはずなのに...やっぱり好きなやつだって考えると火が出そうになるくらい熱くなってく


直美「?ダン、熱いのか?顔赤いよ?」

ダン「あー..なんでもない.」

直美「...?」


急に大人しくなる俺に疑問に思いながらも新しいパンケーキを用意しようとフライパンを温めてくれた






不意に後ろを振り向けば



雲行きがあやしい空が窓から見えた




この後雨が降るかもしらん…








あの日もちょうど

こんな天気やったかもしれない




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