middle&short
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    俺たち兄弟の母ちゃんはまあ凄い人だ。
    結婚適齢期だろうに、15の身空でいきなり子どもを2人も抱える母親になったんだ。
    その時兄貴は2歳ぐらいだったらしいが俺の時と同じで体はガリッガリだし痩せこけてるせいで目つきは悪いし、不気味だっただろうにな。母ちゃんは兄貴を抱っこして連れて帰ったんだって。
    俺は山の麓で拾われたって。
    いきなり2児の母になった母ちゃんに爺ちゃんはびっくりしたらしいけど、母ちゃんに説得されて落ち着いたらしいよ。

    うまい飯食って、勉強教えてもらって、俺たち母ちゃんにはいつか恩返しがしたいんだ。

    母ちゃんは強かった。
    柱になるくらいには強かった。でも柱になるまでの間、月に何度か帰ってくるぐらいしか会えなくて、俺も兄貴も夜泣きが酷かったって爺ちゃんが言ってた。

    まあでも母ちゃんが柱になってちょっとは落ち着いたんだけどね?
    ほら、知ってるだろ?柱になったら屋敷が貰えること。
    母ちゃんはやっと俺たちと暮らせるって喜び勇んで、仕事を張り切った。まあそのおかげで俺たちは治りかけてた夜泣きがまたぶり返したんだけどさ。
    俺たちが寝てる間に帰ってきてまた出発する母ちゃんに、すれ違いになる日が続いて寂しくなっちゃってさ。
    ご飯もなかなか箸が進まなかったんだけど、それに気付いた母ちゃんが反省したらしくて。

    …まあ、改善の仕方が今でも俺たちは納得してないんだけどさ。

    母ちゃん、俺たちと朝ご飯食べたら任務に出かけて、晩ご飯食べる頃に帰ってきて一緒に食べて、俺たちが寝るまで川の字に寝っ転がってずっと歌ってくれてたんだけどさ。
    …母ちゃん、昼間に仕事して俺たちが寝てる間にも仕事してたんだよね…。

    しかも俺たちがそれに気付いたの最近だよ!?
    いくら幼かったとはいえここまで隠し通す母ちゃん凄くない!?よく体壊さなかったね!?

    それでお休みの日なんかは俺たちとずっと遊んでくれてたんだよな…。あれ?兄貴、俺たち母ちゃんの寝顔見たことなくない…?えっ…?母ちゃんいつ寝てたの…?

    母ちゃんは泥団子作るのが上手くてさ。屋敷の庭でサラサラの砂と水なんかでピカピカの泥団子作ってた。
    そうそう、伊之助が貰ってたあれと同じやつね。

    その頃にはもう色んな人が屋敷に来てたなぁ…。
    外国の人たちもいっぱいいたよ。そう、御館様の主治医の先生も母ちゃんが見つけてきた先生ね。

    うふふ、そう、伊之助も炭治郎も、母ちゃんと話してるとほわほわしてただろ?
    分かる、分かるわぁ〜俺たちの母ちゃんだけどね!?
    母ちゃん、俺たちが何してても褒めてくれるんだよね…
    あっもちろん、人としてやってはいけないこととかについてはめちゃくちゃ怒られるけどね?

    もうさ、自分に自信がつくしかなくない?俺結構なビビりで泣き虫だけど、自分に対する自信はあるんだよね…この矛盾さよ…。

    あっ忘れてた俺たちが鬼殺隊をめざしたきっかけだろ?ごめんごめん。
    俺たちがまだ5つか6つ…ぐらいの頃かな?
    母ちゃん、鬼舞辻無惨から民間人を庇って死ぬとこだったんだ。そう、母ちゃん鬼舞辻無惨と会ってるんだよ。
    傷だらけ血だらけの母ちゃんを俺たちはじめて見てさ。鬼舞辻無惨絶対に許さねえと思ったね…。

    まあ目が覚めて怪我治ったら、母ちゃん修行に行っちゃったんだけどね。
    でもね、全国各地の隅から隅までの育手の元へ行って修行つけてもらって、一日に1回は必ず俺たちに顔見せに帰ってきてたからね。

    …ちょっと意味わかんないな…えっ…?
    兄貴なんであの時母ちゃん一日に1回は帰ってこられてたんだ…?物理的に無理な距離じゃない…?ダメだ考えるのやめよう。

    あー、それで、母ちゃんの鎹鴉を炭治郎たちは見た事ある?
    そう!そうなんだよ伊之助は見た事あったか!ハヤブサなんだよ母ちゃんの鎹鴉!もうね、めちゃくちゃ早いの!カッコイイし!なんかムキムキだし!
    まあ母ちゃんの方が早いんだけどね。(※時速300キロより早い)

    宇髄さんの鼠達を鍛えてるのは母ちゃんのハヤブサらしいよ。なんかもう風格が凄い。

    まあめちゃくちゃ強くて早いハヤブサが鎹鴉だからか母ちゃんは情報面でも強かったんだ。どこに鬼が出て次はどこに鬼が出そうとか、被害状況とか、そういう話に特に強かった。
    だからか母ちゃんは皆のピンチに駆けつけるのが上手だったんだ。

    2人も見ただろ?煉獄さんを追い詰めた鬼相手に、ビンタする母ちゃん。
    鬼にビンタする母ちゃん本当に怖かった。無理。身内でよかった。
    しのぶさんやカナエさんを守った時もビンタだったし、聞いたところじゃ錆兎さんとかを助けた時も鬼にビンタだったらしいよ。

    まあそんな感じで俺たちは母ちゃんと爺ちゃんに修行をつけてもらってた訳なんだけど、もうホンッッッットきつかった。
    キツすぎて兄弟揃ってゲロ吐いてた。
    もうね、壱の型しか使えないとか壱の型が使えないとか言ってる場合じゃなかったわけ。

    そんな中で俺の耳について分かったんだけど、母ちゃん喜んでくれてさ。…人の心が分かるのに、こんなに優しく育ってくれて嬉しいって。
    母ちゃん、俺たちに嘘ついたことないんだ。ひとっつも。母ちゃん泣いて喜んでたよ。

    兄貴が先に合格して、その一年後に俺が合格したんだけどさ。俺たちが鬼殺隊の隊服着てるの見て、母ちゃん泣いちゃってさ。まあ内心喜びながらちょっと複雑そうだったけどね。

    そう、そしたら、ここからもう分かるだろ?
    炭治郎達と母ちゃんが会った日のことだよ!あの後柱合会議で禰豆子ちゃんが風柱に刺されそうになったらしいじゃん!!!?
    母ちゃん、12年?くらいずっと鳴柱として鬼殺隊にいるから、御館様より古株なんだよね…そのおかげでなんか助かったみたいで、ほんと禰豆子ちゃんに怪我がなくて良かった!!!!

    あぁ、いやお礼は俺たちじゃなくて母ちゃんに言ってくれ。多分照れちゃって逃げると思うけど。

    それで鬼舞辻無惨との最終決戦だよね…。うぅん、今思い出しても寒気がする…。
    うん?ありがとうね心配してくれて!
    あの時折られた手足はもうすっかり治ってるから大丈夫!

    ねえまだ話さなきゃダメ?…そっかぁ…。
    俺さぁ、よくビビって叫ぶだろ?兄貴曰く汚い高音ってやつ…。うん…。
    血は繋がらなくても親子だなって思ったよ…。
    母ちゃんの反応を面白がった鬼舞辻無惨に、俺と兄貴の手足をまとめて折られた時…。
    母ちゃん思いっきり叫んでたもんね…。汚い低音って感じだったけど…。兄貴も怒った時ちょっとあんな感じの声出すもんね…。

    ブチ切れた母ちゃん凄かったなぁ…。伊之助大丈夫?冷や汗凄いよ…。
    まあ仕方ないか…。

    鬼舞辻無惨、ボッコボコにされてたもんねぇ…。数字持ちの鬼もなんかボッコボコにされてたし…。
    あとから聞いたけど、何か鬼のほとんどが麻薬中毒だったらしいよ…。そのせいで弱体化してたんだってさ…。

    あーーあーあーあー聞こえなーい母ちゃんの友達に中国の商売人がいなかったか?なんてきーこえなーい!

    いや、もう…ほんとに…勘弁してください…。

    なんか気付いたら鬼を人間に戻す薬完成してたとか、この先産屋敷家3代かけても終わるかどうか怪しまれてた後始末を10年ほどで終わらせたとか…全国各地の残党を残らず狩り尽くしたとか…

    母ちゃんは俺たちが来世で鬼と鉢合わせる可能性があるのが嫌だったらしいよ…。
    炭治郎達のお家は来世はパン屋さんだってさ…。

    まあ、そんなわけでずっと俺たちの為に働いてくれてた母ちゃんが、やっと休みを取って遊ぶ気になってくれたのはいいのよ。

    「けど盆と正月と俺たちの誕生日以外は帰ってこないってどうなの!!???あとやっぱり母ちゃん俺たちに甘いね!!!!?誕生日に帰ってきてくれるのね!!!!???嬉しいわありがとうね!!!??」



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