4
母さんが死んだ後、その亡骸は燃やした。
河川敷で、火種に呑まれて燃えていく母さんを眺めながら、お兄ちゃんの手を強く握りしめて、決意を固く固くしていく。
「お兄ちゃん、アタシわざとお侍様の目を突いて焼かれるわ。だからお兄ちゃんは、背中を斬られて、雪の中をアタシを背負って歩いてね」
「応、任せろぉお。鬼になって、母さんを心配させる羽目になった野郎をぶっ殺してやろうなァ」
母さんは、それを心配していたけど。
いいの、鬼になっても、母さんが心配することなんてないのよ、って証明してあげるから。
そこからの行動は早かった。
アタシもお兄ちゃんも、賢かったから。
花街の中でいい噂を聞かないお侍や遊郭の女将を探して、わざと近付いて、不興を買った。
生きたまま焼かれるのは怖かったけど、母さんも最後は燃えてたから、ちょっとだけお揃い気分で思う存分悲鳴をあげてやった。
お兄ちゃん、お兄ちゃん!
女将とお侍がアタシが死んだか確認しに来る!
建物のかげにかくれて、出てくるタイミングを探ってたお兄ちゃんが背中を斬られる。
そうして、この世を恨みながらアタシを背負って歩き出す。
さぁ、さぁさぁさぁ、出てこい鬼!
母さんの話に出てきた、アタシたちを鬼にしてしまうバカ鬼!
出てこなかったらそれはそこまでよ。
アタシもお兄ちゃんも覚悟してる。
随分早いわね、って母さん呆れちゃうだろうけど、いいの。
歩いて歩いて、お兄ちゃんの足が棒みたいになった頃、ようやく鬼はアタシたちの前に現れた。
遊女の体を食べながら、鬼になるかと聞いてくる。
気持ち悪い、気持ち悪い!
でも、アタシたちの目的のために利用させてもらうわ!
鬼になって、あんた達を内側から壊してやる!