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    母さんが死んだ後、その亡骸は燃やした。
    河川敷で、火種に呑まれて燃えていく母さんを眺めながら、お兄ちゃんの手を強く握りしめて、決意を固く固くしていく。

    「お兄ちゃん、アタシわざとお侍様の目を突いて焼かれるわ。だからお兄ちゃんは、背中を斬られて、雪の中をアタシを背負って歩いてね」

    「応、任せろぉお。鬼になって、母さんを心配させる羽目になった野郎をぶっ殺してやろうなァ」

    母さんは、それを心配していたけど。
    いいの、鬼になっても、母さんが心配することなんてないのよ、って証明してあげるから。

    そこからの行動は早かった。
    アタシもお兄ちゃんも、賢かったから。

    花街の中でいい噂を聞かないお侍や遊郭の女将を探して、わざと近付いて、不興を買った。
    生きたまま焼かれるのは怖かったけど、母さんも最後は燃えてたから、ちょっとだけお揃い気分で思う存分悲鳴をあげてやった。

    お兄ちゃん、お兄ちゃん!
    女将とお侍がアタシが死んだか確認しに来る!

    建物のかげにかくれて、出てくるタイミングを探ってたお兄ちゃんが背中を斬られる。
    そうして、この世を恨みながらアタシを背負って歩き出す。

    さぁ、さぁさぁさぁ、出てこい鬼!
    母さんの話に出てきた、アタシたちを鬼にしてしまうバカ鬼!

    出てこなかったらそれはそこまでよ。
    アタシもお兄ちゃんも覚悟してる。
    随分早いわね、って母さん呆れちゃうだろうけど、いいの。

    歩いて歩いて、お兄ちゃんの足が棒みたいになった頃、ようやく鬼はアタシたちの前に現れた。
    遊女の体を食べながら、鬼になるかと聞いてくる。
    気持ち悪い、気持ち悪い!
    でも、アタシたちの目的のために利用させてもらうわ!

    鬼になって、あんた達を内側から壊してやる!

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