#name#は、物心ついた時から人には見えないものが見えた。
それは死んだ人や動物の幽霊だったり、精霊だったり、時には鬼を見ることもあった。

そして厄介なことに触れたモノの記憶を見ることができ、心を読むこともできる。触れなければ過去を見ることも、心を読むこともない。それでも、普通に生活する中で人に触れないというのは案外難しいもので。街に出て混み合った道を歩けば、擦れ違いざまにぶつかり腕や肩が触れ合ってしまう。
このよく分からない力のせいで、幼い頃は随分と嫌な思いをした。見えないものが見えれるといえば "恐い"と避けられ、人の過去が見えると言えば "嘘つき" と虐められ、その人の心を読めば "気味が悪い" と邪険にされた。でもそれはそれでしょうがないとも思った。

こんな力なければ良かったのに...なんて嘆いても、持って生まれてしまったものはどうにもならない。この力も自分の一部なのだから受け入れてしまえばいい、と子供ながらに決心したのを今でも覚えている。
勿論、決心したからといってそう簡単に自分が変われるわけではなかったけれど。




今でも友達がいない#name#は、いつも通り一人で帰路についていた。




「#name#」
「はい?」

不意に名前を呼ばれて振り返る。
声の主、であろう人物を見やれば上半身にマントを身につけ





「...へ、変な人」
「はははっ、君は素直だね。でも変な人ではないよ」





「S.O.F...精霊ですか?」
「ああ、五大精霊の一つだよ」
「へー...夕焼けみたいで綺麗ですね」
「...こいつを綺麗だなんていう奴は、君が初めてだ」








「僕の仲間になって欲しいんだ」
「仲間...?」
「ああ。僕のために戦って欲しい」
「...嫌です」
「なんだって...?」
「ハオさんのために仲間になる気は無いです」









「誰かの為だなんて...そんなのただの押し付けです。誰かの為にやったことは、結局はその誰かの重荷になる。自分の業を他人に押し付けるだけの、その言葉は私嫌いです...」
「へえ...」
「だから」

真っ直ぐにハオの目を見据えた。
何を考えているかわからないその瞳に僅かながら身体を震わせるも、#name#は満面の笑みを浮かべる。何かを決断したような、何かを









「私は私のために、ハオさんの仲間になります。私の...自分自身のためにハオさんのお傍に居させてください」


そう言って「お願いします」と頭を下げた#name#は、嬉しそうに足元にいる"ネコ"を抱きしめた。







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