シビュラシステムに守られていた世界は終わった。
あれから幾度となく季節は巡り巡って、時は2218年を迎えようとしている。近代化は進み街並みはますます機械的にはなったものの、人間はその進化に付いていくことができずに今も尚取り残されたままだ。あれだけ完璧で誰からも崇められて来たシビュラのハラワタ、それを暴き出したのが何者なのかは誰も知らないし知ろうとも思わない。
システムが廃止されてからの世界は酷いものだったらしい。結局のところ、機械そのものを造り出したのは人間だ。機械に意思は存在せず公平な判断をできる最後の要だとも言っても過言ではないだろう。しかしそこに手を加え最終的にその機械が使えるかどうか判断をするのは人間なのだ。


それでも自分は今の時代が好きだ。

槙島聖護は薄く笑みを浮かべながら人で溢れかえる交差点を進む。煩わしそうに他人を避ける人たちを横目に、軽快な足取りで。頭上にはいくつもの道路が交わりあい、
機械に頼るのはいつの時代も変わらないが、それでもこの世界には確かに人の意思が存在する。どこへ行き、何をするか、それを全て自分の意思で判断する。



「やあ。遅れてすまない」
「お前、悪いと思ってないだろ」


目の前に座る黒髪のガタイのいい男は、狡噛慎也。あの世界で自分を殺した男だ。今こうして仲良く待ち合わせをしているなんて、きっとあの時の自分たちは思いもしなかったはずだ。

「新人、入って来たんだろう?」
「...相変わらずタフでね。お前の頭をヘルメットで殴った頃と何も変わっちゃいない」
「はは、あれは流石の僕でもキツかったな。気絶なんてしたことなかったしね」
「俺はスカッとしたけどな」






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