わたしの存在
雨が降っている。
ざあざあと、結構強めの雨だ。
「おはようございます」
安室透は声を掛けてきた。わざわざ、店内から出て来て。いつものように、人の良さそうな微笑みを張り付けて。
でも、やはり嫌な気分はしない。それが演技でも笑顔は笑顔、安室透という降谷零の笑顔。
「残念ながら、今日は雨ですね」
わたしの手から傘を引き抜いて、
「残念、ですか?」
「ええ。ぼく、雨は嫌いなんです」
「そうなんですかー。わたしは、雨大好きですよ」
傍にある水溜りに雨が落ちる度、波長が広がる。