口溶け
チョコレートを口に含む。
溶け出すまでの時間はあっという間に過ぎ去り、甘い香りが広がる。
「んんん〜〜 おいし〜〜〜!」
たった一粒で幸せを実感させられる。
「うーん、やりよるなおぬし。」
チョコレートの缶を見つめ、ぶつぶつ呟いていると、後ろから声がかけられた。大好きなあの人の声。
「フッフッフッ!〇〇!」
「あ、ドフィ。」
濃い色のサングラスに覆われた瞳と弧を描いた口元。
いつも通り、変わらないデフォルトだ。
「何だ?菓子か?」
ドフィの視線の先はチョコレートだった。普段はそんな些細なこと、興味を示さないのに。こんな時だけ、どうしてだ。何でだ。
「そうだけど、、」
ドフィはじっと視線を固定したまま何か考えているようだった。
珍しい。何だ。怪しすぎる。
「はっ!そんなに見つめてもあげないからね!?これ!コック長にわざわざ頼んで買ってきて貰ったんだから!」
ぎゅっと缶を抱きしめ、ドフィに向き直る。これは何が何でもあげららない。大好きなドフィでも。
だってだって、何ヶ月も待ってやっと今日口に入れたのだ。
「フッフッフッ!取ろうなんざ思ってねェよ!」
ドフィは口元に笑みを浮かべたまま、頭をふわっと撫でる。
いつもなら奪い取ってでも食べていくはずなのに、どこかしょんぼりしていて。
そんなに、欲しいのかな。
ドフィがそんなに食べたいのなら、あげてもいいと思うのだけれど、やっぱり全部の種類を食べたいのだ。譲れない。
頭に乗っていた、大きな掌が離れていくのを感じた。
「ま、待ってドフィ!」
「ん?」
抱きしめていた缶の蓋をあけ、広げる。
大好きなドフィの悲しい顔を見るくらいなら、チョコレートをあげるくらい、何てことない!!
「食べたいの、どれ?」
色とりどり、細かい細工が施されたチョコレート。ドフィはピンクのハートの形のを選んだ。
「俺はこれが食べたい。」
ドフィの笑った顔が大好きだ。他の人には見せない本心からの笑みが。
長い指でチョコレートを摘む。そんな動作も美しい。見惚れてぼーっとしていたら、ドフィにそのチョコレートを口に押し込まれた。
「ひょっ、ドフィ!?」
「フッフッフッ!」
ああ、おいしい。口の中で蕩けて、、。
「じゃ、頂こうか。」
あ、ドフィが意地悪な笑い方してる。わたしを揶揄うときいつも浮かべるやつ。
頭だけ働いているようだ。ドフィの顔が近づいて、唇を奪われる。
隙間をこじ開けて侵入してきた舌は、蕩けたチョコレートを絡め取るようにして口内を犯していった。
「ごちそーさん。これで半分こできただろ?」
にやり。
わたしをその場に置き去りにして、ひらひらと手を振って去っていく。
ドフィのキスは気持ちよすぎるのだ。それに加えてチョコレートの甘さによってより官能的に感じてしまった。
くたりと腰が抜けてしまう。
ドフィには、敵わないな、。
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大好きなチョコレートを差し出してくれた〇〇には決して言えないこと。
ドフラミンゴがチョコレートの缶を見ていたのは、〇〇の喜ぶ顔を独り占めしていたから。
「俺以外であんな顔させられる奴がいるなんてなァ。」
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