催眠術
「〇〇チャン、逃げても無駄だぜ。」
ピンクのもふもふを本部の廊下で見つけた瞬間、くるりと背を向けて、必死に遠ざかっていたのに。ぱっと腕を掴まれた。
「ドフラミンゴさん。今日は会議ですよね?どうしてこんなところにいるんですか?」
「そうだったっけなァ、〇〇チャンに逢いに来てるからそんなもんはついでだよ。」
「なんでいつもそうふざけてるんですか!もう始まる時間ですから行ってください!センゴク元帥がお待ちです!!!」
ツレねェな、と笑みを貼り付けたまま、そのままくるりと背を向けてた。
「俺は〇〇チャンに対して真剣じゃなかったことはねェからな。」
そう呟いて、ひらひらと手を振って去っていく。
〇〇が王下七武海の会議でお茶出しの担当だった時に、何故かドフラミンゴさんに気に入られてしまった。
そもそも、本部勤務とはいえ、下等兵の〇〇に構っていること自体、おかしいのに。
手を焼いているのに、迷惑な筈なのに、ドフラミンゴさんの甘い言葉に少しの嬉しさを感じてしまっている自分もいて。
これは恋などではないのだ。
彼と私は海賊と海軍で、それ以下でもそれ以上でもないのだ。
そう自分に催眠術をかけるように何度も何度も言い聞かせて来たのに。
大前提として置いていることに、いつか嫌気がさしてしまいそうだと思ったが、頭を振ってその考えを振り払った。
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