それは恋の始まり




今日はこれから隣町にある高校で、所属している剣道部の合同練習があるので俺は急いでいた。

「…総司、早くしろ」
「やあ、はじめくん」
「…何を呑気にしている」

これから行かねばならないというのに、
総司はのんびりと教室で菓子などを味わっている。
総司の隣に座る雪村は、俺を見ると少々気まずそうな顔をして総司と交互に顔色を伺っていた。

「総司、いい加減にしろ」
「はじめくん、気が早いよ」

まだ土方さんが来ないから大丈夫。
そういってもう1つ菓子の袋を開けた。

確かに、まだ土方先生は来ておらぬ。
だがしかし、総司は土方先生を日頃から困らせすぎなのだ。
今日くらいはおとなしく言うことを聞いてもいいのではないか。
全くいつも総司はなんだかんだと理由をつけてはうまいこと難を逃れる…


「はじめくん」
「…なにゆえ…」
「はじめくん?」
「いや、だがしかし…」
「はじめくん、置いてくねー」
「……む…」


俺が総司についてあれこれ考えているうちに、総司は菓子を食べ終え、俺を置いていつの間にか廊下の先を雪村と歩き出していた。

「な、なにゆえ…」

せっかく迎えに来てやったというのに、
気づけば俺を越して先を歩いていってしまう辺りはさすが総司だ。

雪村が、何度も申し訳なさそうに後ろを振り返って俺を見ていた。







土方先生と校門で合流してから隣町の高校へ無事到着し、練習試合をするということで胴着に着替え体育館へ向かう。

此方の高校は、体育館が大変広く、中へ入ると網で仕切った隣ではバスケ部がチーム戦を行っていた。

「斎藤先輩、バスケットに興味がおありなんですか?」

雪村が不思議そうにしているのを見て、
ハッと我にかえる。
どうやら無意識のうちに他校のバスケのプレイに見入っていたようだ。
雪村には、いや…と適当に答え、俺は体育館の奥へと歩を進めた。






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