隊、長……?
一方屯所では名字から着た謎のメールに頭を悩ませていた。
そこに斉藤が息を切らせて戻ってきた。
[名字さんは?!上田から帰ったと聞きましたZ。]
「名字?まだ、帰ってきてねェけど一緒じゃなかったのか?」
土方がそう言うと斉藤は目を見開いた。
「そう言えば終、名字といえばこんな謎のメールが届いたんだが、一体なんのことだ?」
『今回のホシのシマを発見。付近に女性が倒れているので直ちに保護して頂きたい。場所はさんのえ』
斉藤は、ハッとした。
自分の携帯を見ようとするとひび割れていた。上田と会った時ぶつかり転倒したので、その時に違いない。
確か名字は1-Aの倉庫から見ていた、きっとあの順番から行くと3-Aか、3-Hで間違いない。
局長室を出て遠藤と森、上田の三人部屋へ行く。
もぬけの殻だった。
嵌められたか。
一旦局長室に戻り今の状況を報告する。
[今回の主謀は遠藤、森、上田と見られるZ。メールの場所は倉庫の呼び名で、3-Aか3-Hかと。名字は多分そこで捕まっていると思われるZ。]
「何だと?!……ってオイ!終!!!まだ作戦すらたててないぞ!!!」
近藤が叫ぶがそのページを切り離して、斉藤は倉庫街へパトカーを走らせた。
「アイツ、あんなにも感情的だったか?」
「……あんなに血走った目の終、初めて見たぞ。」
近藤と土方は少し呆気に取られたが、すぐに編成などの話を始めた。
倉庫街に付くと当たりは夕焼けに包まれていた。
暗くなる前に見付けないと、こちらが不利だ。
三番倉庫に向かってパトカーから降り走る。
先程来た倉庫街は雰囲気がまるで違って重く血腥(ちなまぐさ)かった。
血の匂いで鼻がイカれるのを感じながら辿ると、女が首から血を流して倒れ込んでいた。
綺麗な切り口からすると抵抗も出来ないくらい弱っていたのだろう。
保護の女はコイツで間違いない。
キョロキョロと辺りを見渡すと、深緋色のねじり棒が落ちていた。
サッと血の気が引く。
何かが引きずられた後と彼女の髪が落ちていた、きっと髪をひっぱられたのだろう。
その近くに女とは別の血の跡が飛び散っていた。
名字のねじり棒を手に取る。
すると何処からかバシリと力強い鳴き声が聞こえた。
名字だ。
あの打ち合いの時や稽古の時にに聞いた、名字の剣撃の音だ。その音を頼りに、ふらりとそちらに足を向けた。
「弱くなったなァ、猛犬の名前!薬かァ?!薬で動けねェっていうのか??!」
「うるせェ、ふざけた事吐かすんじゃねぇ!!!」
ググッと立ち上がろうとするも、このコンテナまで引きずられてきた身体は、ボロボロだった。
珍夜鎮魂丸で吠える森を吹っ飛ばす。
手の力が弱まっていたのか珍夜鎮魂丸諸共吹っ飛び、カシャンと呆れたように珍夜鎮魂丸が笑う。
遠藤は名字の腹に足を乗せグリッと踏みしめる。痛い筈の行為が薬のせいか、苦しくて気持ちがいい。
今の自分には快楽としかなく、酷く絶望した。
「ハッ…んんっ!」
「気持ちいいかァ?もう、真選組には俺らがホシだっていうことくらいバレてるはずなのに何で来ないんだろうなァ?アァ?」
気持ちが良くて涙で滲んで何も見えない。
身体がこの快楽を求めようと、脳の機能を停止させていく。
「昨日Zが完成していた。逃げるなら今だと思ったが、まさかお嬢にまで嗅ぎ回られるとは思わなかった…ぜ!」
思いっきり足を振り上げられる。
「斉藤は分かってたはずなのに、何でお前を一人で行かせたんだろうなァ?」
ニタリと笑って足を勢いよく下ろそうとするまさにその時だった。
ギィイイ!!
鈍い音を立ててコンテナの扉が開く。
夕焼けがコンテナに降り注ぐ。
「御用改めである、真選組だ。神妙にしろ。」
落ち着いた声とは裏腹にその声は怒気をはらんでいた。
逆光が邪魔をして姿は見えない、涙が滲んでぼんやりと影が見える。
その人が横通ると、優しい石鹸の香りがする。
よく嗅ぎなれたこの匂い誰なんだろう、分からないや。
「隊、長……?」
だったらいいなと思い、喘ぐ様な甘い声が出る。
コンテナに差し込む光の眩しさに名字は、そのまま意識を手放した。
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