ごめんなさい。隊長。
すぐに手足が痺れてきて、立とうと踏ん張ると身体が震える。
何故だか身体がとても熱いし、この痺れも心地がいい。
「ワリィなお嬢、ここでアンタに邪魔される訳にはいかねェんだよ。」
ニタニタと笑う上田に怒りがこみ上げる。
「上田ァア!何が目的だァ!!」
声を出すのも精一杯で、吠えるように問いかける。
タラリと汗がつたう。
目の前が霞む。
背中に背負う珍夜鎮魂丸を鞘ごとベルトから抜き、杖がわりに地面に突き立てる。
「今更思い出してもなァ。それに今あの方はここにはいない。隊長もなァ!」
隊長。そうだ。大丈夫だと言って走ってきてしまった。
メールは途中送信だったし、ここがわかるかどうか。
珍夜鎮魂丸の鞘を片手に持ちスッと抜くが、カチリとまたおさめる。
「なんだァ?殺らねぇのか?」
「……抜刀許可はおりてねェから。」
「ハハ!甘めなぁ!甘やかされて育ってきたオメェじゃあ仕方ねぇか!」
「……。」
「そうだ、隊長は今頃屯所だ。お前が手掛かりを掴んだから、局長に伝えると先に帰ったと言うとアイツも帰っていったぞ?」
「…テメェら、鬼兵隊の目的はなんだ。」
「ハッ!もうあの人の仲間じゃねェ!俺たちはあの人よりも高みを目指す。」
ねっとりとギトリと鈍く光る目に狂気を感じる。
汚さと気持ち悪さに顔を歪めた。
「とりあえず、今お前を殺るとこの先面倒だ。寝とけや。」
拳を振り上げられる、鞘に収まったままの珍夜鎮魂丸で庇う。
その振動でビリリと身体に痺れが走る。
「んぁっ!」
「いい声で啼くじゃねぇの。その薬はなァ、エストロゲンっていうのに反応して、身体に熱を持たせて性器の活動を活発化させる効果がある。エストロゲンなんってモンは男には微量しかねェから効かねェが、女は男の10倍は分泌されているモンだ。それはもう、効果絶大よ。」
今度は三方向から殴られる。
いつもより重い身体に鞭を打ち、拳を避けて三人の間から抜ける。
動く度息が上がり、肌も熱を帯びて苦しい。
弱みは見せてならない、背筋を伸ばし真っ直ぐ立つ。
「ハァッハァッ!」
相棒である珍夜鎮魂丸がこんなにも重く感じたことは、初めて持ったあの日の時より無い。このじゃじゃ馬をどう扱うか困ったものだ。
自分の腕を振るように扱っていた珍夜鎮魂丸も、今は何も言う事を聞かず反撥してくる。
グワンと珍夜鎮魂丸を振り上げ、三人に一文字斬りを食らわせる。
ガガガッと鞘と人間の当たる音と感触がする。
ビクビクと身体も震え上がり、切なく疼く。
「手間取らせんじゃねェよ。ほら、さっさと寝ちまいな!」
先程の痺れにクラッと一瞬意識がとび、遠藤の拳が米神にあたる。
脳がグラグラ揺れて目が上に向いて白目になる。
ギュルリと視界が揺れて地面に伏せた。
「ごめんなさい。隊長。」
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