chapter:prologue 俺を覆うのは闇。 一点の光さえもなく、すべては虚無というものに支配される。 目の前には……愛おしい君が横たわる姿。 なぜ、君は俺を置いて旅立ってしまったのだろうか。 君の手を握っても、もう握り返してくれない。 俺を映していた美しい瞳も閉じられ、何も映し出すことはない。 あれほど美しかった桃色の肌も青白い。 微笑みを絶やさなかった唇は紅色から紫に変化している。 耳元で君の名を呼んでも、返事さえもしてくれない。 ――ああ、なぜこのようなことになったのだろう。 俺を置いて逝った君は酷い人だ。 そして、漆黒といわれる闇の中、俺は静かに涙し続ける。 |