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ベットから起き上がり、ゆっくりと僕が学園に来る前の話をした。






親に捨てられたこと。
寺で育ったこと。
アリスのせいで学校に通えず、友達欲しさに今までの自分を捨て男の子になったこと。
爺様が倒れたこと。
学園で辛かったこと。






たくさんお話した。
寺のみんな以外でこんなにもたくさん喋ったのは初めてだった。







「日向くんと一緒にいたら、僕の知らなかったことばっかり起こるんだ。」


「‥‥」


「大切とか、不安とか、寺にいたままだったらそんな感情きっと知らないままだった」




いつの間にか目が水分で覆われ、視界が霞む。




「全部、君のおかげなんだ」




そして、容量を超えた涙は溢れ出す。




「‥‥ありがとうッ」

「‥‥ッ」


ぎゅう‥‥






握ってくれていた手を引っ張られ、力強く抱きしめられた。





「俺の過去も、聞いてくれるか‥‥?」



「うん‥‥日向くんのこと、僕もっと知りたい」





落ち着いた声で彼は話し出した。






アリスのせいで街を転々としていたこと。
ある街で乃木くんに出会ったこと。
妹がアリスのコントロールを失って街が燃えたこと。
その妹を人質に取られ任務をこなしていること。






そして、アリスの形のこと。








話している間もずっと抱きしめあっていた。




脆く、か弱いお互いが崩れていかないように。これ以上、あの真っ暗な闇に落ちたくないと心から叫び共鳴しているように。






「話してくれてありがとう‥‥」

「お前もな」





そう言いお互いに小さく笑った。





「棗」

「え?」

「次から日向くんって言うのやめろ。棗でいい」


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少し照れたようにそっぽを向きながら言う。








「ありがとう、棗」








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