06
仮面の人に出会ってから、日常が変わりつつあった。
ベットに入れば、彼に言われたことが頭の中をグルグルと回る。
爺様は毎日のように僕に稽古を付けてくれた。きっと毎日毎日、寿命を削っていた。僕のせいで、爺様が死んでしまう‥‥。
行平さんにこのことを話したかった。誰かに悩みを打ち明ければ楽になる気がしたけど、僕のせいだと責められるのが怖くて言い出せなかった。
ずっと 自分の部屋でぐずぐずと泣いていた。ご飯も食べたくなかった。心配してくれた心読みくんと持ち上げくんに食堂に誘われて席についたけど、自分の目の前に置かれた食事は半分も食べれなかった。
「最近良くない噂が回ってるね‥‥」
「うん‥‥」
あの日から突然僕の変な噂が流れ始めた。
“化け猫に変身して人を食べてしまう。”
“近づけば燃やされる。”
“学園に入る前は二人も殺した。”
ありもしない噂は何故か中等部から始まり、たちまち初等部にまで回ってきた。
そんなことしてないし、そもそも人を食べれるほど大きな化け猫に変化したことなんかない。そもそも僕にはそんなに強い力ないし‥‥。
「凪君がしてないのは僕らわかってるよ?」
「そーだぜ。お前のアリスは何回も見たからな」
僕を挟むように座る2人はそう言ってくれた。学校に遅刻しそうな時、化け猫に変化して走って登校してる所を見られたりましたことがあるから、僕のアリスがどの程度のものか彼らはよく分かってる。
「それに凪くんのアリスコントロールは完璧出しね〜」
いつものニコニコ顔で心読みくんは僕を褒めてくれた。
嬉しい。
僕の住んでいた地域はアリス保持者に対する偏見が強かった。外に出れば迫害を受けることも多く、爺様はそれもあって僕を外に出すことを極力避けてきた。
そんな環境下の中で育った僕は自分のアリスを褒めてもらうことなんて滅多になかった。その事に素直に嬉しかった。
行平さんや鳴海先生と一緒に何度もアリスの特訓をしたおかげで、2つのアリスを完璧にコントロールすることができるレベルにまで達していた。
コツン!
「おい化け猫!」
「とっとと出てけよバケモノ!」
「‥‥」
中等部の生徒がわざわざ初等部の寮付近まで来て、背中を向けていた僕に向かって石を投げつける。
あの噂が出回りだしてこういう事が毎日のように続いた。いつも通りに心読みくんと持ち上げくんと一緒に帰れば、彼らに被害が及んでしまう。折角できた友達なのに、迷惑をかける訳にはいけない。僕が我慢しなくては
ぽた‥‥ぽた‥‥
投げられた石が当たった頭から血がたくさん垂れてきた。
なんで、僕なんだろ。
僕は何もしてないのに。
ここでも、寺でも、どうして‥‥僕はみんなに嫌われてしまうんだろ‥‥。
こういう時、どうしたらいいんだろ。
爺様は、そんな事教えてくれなかった‥‥。
「あっれー??何してんだお前等?」
「中等部か??」
「げっ、安藤!」
「しかも特力の代表いるじゃん‥‥」
「逃げるぞ!!」
僕の目の前には、長髪のお兄さんと帽子のお兄さんがいた。
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