3.初部活なんて知らずに


耳障りな音がする。
時々子供のはしゃぎ声や、落ち込んでいるような声。同い年くらいの女子達がはしゃいでる声。
相変わらずうるせぇところだけど、色々考え事をリセットするには丁度いいのかもしれない。

「あ゛!?あ゛ー…くっそ負けた…。」

こんな風に負ければストレスが溜まるだけだけど。つーかなんだこの格ゲー相手強すぎんだろ、単純にアタシが弱いだけか、そうか。
こんな時ショーゴいれ、ば………くっそ、結局考えてんじゃん未練たらしい、学校サボってゲーセンに来た意味何だったんだよ。

くそっ、と八つ当たりも込めつつゲームを蹴れば、後ろにいた小学生が怯えたような顔をした。悪いとは思う。つーか同い年くらいの女子達とか小学生とか居るってことはかなり長時間ゲーセンにいた事になるな…あんま金がねぇから途中までぶらぶら歩いてただけだったけど、それなりに時間は潰せたか…。

この後どうするか迷ったが、とりあえずゲーセンを出て適当に外をぶらつくか…。





「日向君、マネージャー希望の女の子の入部届、確かあったわよね?」
「?あぁそうだな?」
「……ここに女の子がいないのはどういう事かしら」
「…休みじゃねぇの?」

男子バスケットボール部カントクと名乗った茶髪の少女、相田リコは困惑と怒りの感情を隠さずに、主将の日向順平に尋ねた。
リコがこんなにも苛立っている理由は、マネージャー希望の少女、九条敦葉の姿が見えないからである。
確かにマネージャー希望としてバスケ部のブースに来ていた、目立つ金髪の少女は見当たらない。

「初日にいねぇとなるとなんだ…?体調崩したかサボりか?」
「前者ならまだしも後者だった日にはどうすればいいのよ!はっ倒しちゃるわ!」
「落ち着けカントク…」

とりあえず九条と同じクラスのやつか何かいないか聞いてみるべきだと日向は提案し、それもそうかと納得したリコは、片っ端から1年生に聞き出すことにした。
その中で同じクラスだと判明したのは先程驚かされた黒子テツヤと、高校生離れした身体能力を持つ火神大我の二人。

「九条さんは今日来てた?」
「来てました。ただお昼頃から居なくなっていたかと…」
「昼までは確か普通にいた」

サボり確定である。頭に来たのかリコは首から下げていたホイッスルを投げ、大きな声をあげる。
初日からサボるとは故意なのか、それとも単純に忘れていただけなのかは不明だが、とにかく次の部活は絶対に連れて来て!!と黒子と火神に指をさす。
そもそも部活前に学校ごとサボられるとなんの意味も無い…などという言葉は飲み込む。今それを言えばとばっちり間違いなしだ。

「特に!黒子君は九条さんと同じ中学でしょ!」
「と言ってもあまり話は…」
「いいから連れてくる!!」
「…はい、わかりました」

入部届で帝光出身が二人もいる事実。それは凄いかもしれないが、片や実力が不明、片やサボり……などという現実に、不安になる一方だった。
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