青の破軍

3


「俺たちがお嬢様の護衛?」


ユージンがいかにもいぶかしげそうに言った。

どうやら、今度の仕事はクーデリア・藍那・バーンスタインとかいう火星の独立運動をしている少女を、地球まで護衛するらしい。

しかも1軍じゃなくて、今まであごで使ってき参番組に。

聞いたところかなりのVIP様を任せるなんて不思議な話だ。


「お嬢様っていーい匂いするんだろうなぁ! なあ、三日月!」

「お嬢様っても同じ人間なんだし、そんなに変わんないだろ」

「はぁー!?」


ミカちゃんの冷めた一言に、ノルバが叫んだ。


「女に飢えてない三日月さんにそんなこと聞いても無駄っスよ」

「ノルバもミカちゃん見習って少しは落ち着いたら?」


ねー、とダンジと笑う。


「なんだとコノヤロッ!」

「シノうるさいよ」

「ああっ! そりゃないだろビスケットぉ!」


ノルバがおもしろいくらいにオーバーリアクションをするものだから、思わず吹き出してしまった。

ダンジや近くにいたタカキくんも、つられて笑った。


「でもあれだな。社長もよ、口だけの社員様より結局は俺らの力を認めてるってことなんじゃねえの? で、これをきっかけによ、社員の奴ら出し抜いて、俺らが一軍になって……!」

「いくらマルバの親父がモーロクしたって、使い捨ての駒くらいにしか思ってねえ俺らを認めるわけねえだろ」


オルガがさもつまらなさそうに、スプーンでお椀を叩いた。


「……。おい、俺ら参番組隊長のお前がそんなんだから、いつまでたってもこんな扱いなんじゃねえのか!」

「やめなよユージン」

「うっせえビスケット、てめえは黙ってろ。だいたいてめぇあああああっ!!」


ユージンの文句は、終盤悲鳴に変わった。途中で三日月がユージンの耳を引っ張ったからだ。


「ケンカか? ユージン。俺は嫌だね」


三日月はさらに耳を引っ張った。


「取れるっ、取れるって」

「ケンカじゃねえよこれぐらい。なっ」

「あ、ああ! 当たり前だろ!だから放してくれよ三日月、とれちまうから! すんません!すんませんでした!あっ…たっ……!」


オルガが割って入ったせいだろうか、三日月はしぶしぶ手を離した。


「バーカバーカ、ユージンのバーカ」

「うるせえ! お前もやられてみろよ、マジで取れそうになるからっ」

「あいにく私はそんな馬鹿なことしませーん」


涙目になりながら耳を押さえるユージンに色々ちょっかいを出すと「お前ほんとに怒るぞ!」と言ってきた。

うん、そのかっこーじゃあ、全然説得力ない。

素直に反応が帰ってくるから、ユージンからかうの面白いよなあ。やめらんないよこりゃ。


しばらくすると、食べ終えたオルガやビスケットは早々と席を立った。さっそくお嬢様を迎える準備があるらしい。

私もそろそろおいとましましょうかね。午後には2、3室ほど掃除しなきゃなんないし。

ということで、冷たいスープを持って戻ってきたタカキくんと席を交替した。

また、誰かに殴られたんだろう。さっきは濁してたけど、タカキくんの頬に湿布が貼ってある。


「ターカキくん」

「はい?」

「おそろい」


私は、さっき殴られて腫れた頬を、人差し指でとんとんと叩いた。私も今はお情け程度の湿布を貼っている。


「そうですね。へへ……」


タカキくんはへらりと笑った。


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