青の破軍
7
合図と共に、敵の攻撃が始まった。
数に任せた、たくさんのミサイルが雨のように降ってきたのだ。
頭痛て歩くことさえままならなかった私は、三日月に支えられながら格納庫へ急いだ。すでに基地はあわただしく騒ぎ始めてる。
「大量のMWが攻撃を?」
「ああ! 三日月も早く乗れよ! 準備ができ次第出撃だと!」
MWの準備をしていたノルバが叫んだ。上半身裸で、背中にはすでに阿頼耶識システムが装着されている。
「わかった。でも……」
「私は大丈夫」
私は無理に笑って見せた。
正直、今にも吐きそうなくらい頭痛がする。だけど操縦の上手い三日月が、私のために、こんなところでのんびりしてちゃいけない。
「ちょっと油断してただけだから。三日月は早く行って」
「……わかった」
三日月は力強い目で頷いた。
「タカキ、アイリンをたのむ」
「はい?」
「具合がよくない」
たまたま側を通りかかったタカキくんに、三日月は私を預けて、急いで自身のMWの所へ走った。
「あの、アイリンさん? 頭が……?」
「ちょっと痛むだけ、大丈夫。それよりオルガはどこにいるか知ってる?」
「オルガさんなら、ユージンさんの所にいるはずです。あの、手を貸しましょうか?」
「すぐに治るから大丈夫。それより早く戦いの手伝いをしてきて、そっちの方が大事でしょ?」
「……はい」
そうだ、こんなことろでくたばるわけにはいかない。そのためにはベッドで寝てちゃ駄目なんだ。今は無理してでも、生きるために最善を尽くさないと。
タカキくんは心配そうにこっちを見て、意を決したようにMWの所へ走った。そうだ、それでいい。
私も動かなきゃ。
痛む身体に鞭打って、オルガのもとへ急いだ。
「……は後ろから攻撃する! 挟み撃ちだよ!」
オルガ達の所へたどり着くと、ちょうどハエダがササイ(出っ歯)を引き連れてなにかを指示してる所だった。
でも、聞いているオルガの顔は、明らかに不満で溢れている。
「いいから準備ができ次第出撃だ! いいな!!」
叱咤のような指示を出して、ハエダは格納庫を出ていった。
彼が側を通り過ぎるとき「てめえもウロチョロしてねえで、何かしろよクソ女!」と叫ばれた。
その時の彼の目、私は直感的に不快感を感じた。
気持ち悪い。この人、嘘ついてる。
「オルガ!」
「ああ、アイリン」
「面倒なことになってるね」
「全くだ」
私は格納庫を見回した。どころかしこもMWの準備や慌ただしいし、外だって爆撃の音がこっちまで聞こえてくるくらい。オルガの背中にもすでに阿頼耶識が装着されている。
「……さっきの人、オルガ、わかる?」
「目が泳いでたな」
オルガも感じていたらしい。(最も、私の感じかたとは違っているだろうけど)
ちっ、と舌打ちした。
「それとオルガ、敵はたぶん、MSを持ってる」
「なんだって?」
オルガの顔が明らかに青くなった。
そりゃあそうだ。これだけのMWの軍にMSとなれば、たとえ1機だけでも、とてつもない脅威になる。
「たぶん2……いや、3機。今は遠くから高みの見物をしてる」
「どうしてそんなことがわかるんだ」
「私がニュータイプだから」
「はあ?」
「……とにかく、MSがいることは間違いない。1軍のこともあるし、念には念を入れておかないと」
「まあ、それは一理あるな」
「どうするの?オルガ」
隣にいたビスケットが、オルガに懇願するように指示を求めた。
「……ビスケット、頼みたいことがある」
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