青の破軍

6


結局、本来の仕事が夜遅くまでかかってしまった。

上の人には、遅れた理由をきちんと話したら言葉を濁したけど、今日までにと念を押されたのだ。さすがにそれを破っちゃまずい。

ま、お嬢さんの相手をしようがしまいが、元々定時きっかりに終わる予定はなかったし、別にいいんだけどね。

今日は 本来 ・・ の夜の仕事がなかったからラッキーだ。


「あれ、ミカちゃん」

「ああ、アイリン」


寝床に帰ろうと外を歩いていたら、走り込み中の三日月に出会った。

昨日といい今日といい、最近はよく人に会う。まあ、ミカちゃんとは前々から会うことはあったけど。


「またトレーニング?」

「うん。アイリンは今日はしないの?」

「あまりやりすぎると怪しまれちゃうから」

「へえ、大変だね」


パイロットは体力も必要だから、私もカンが鈍らないよう、体力作りだけは人の目を盗んでやってきた。

さっきも言ったけど、あんまり筋肉をつけたら怪しまれるから、適度にね。

ま、そうしていくと自然にミカちゃんなんかと一緒になることが多くなるわけですよ。


「クーデリアさんとはもう話した?」

「うん」

「仲良くなれた?」

「……さあ?」


三日月の言い方は、少し拒絶した感じだった。

なるほど、あのお嬢さんが落ち込んでたのは、ミカちゃんと何かあったからなんだな。


「そういうアイリンは、仲良くなれたの?」

「…………さあ?」


お互い顔を見合わせて、笑った。


「やっぱり、一緒に走っていい?」

「うん」


私とミカちゃんは並んで走った。

夜の風は気持ちがいい。走るとなにもかも忘れることができる。


「アトラとはどう? 最近仲良くやってる?」

「最近忙しいからなあ。会ってないかも」

「あーあ。女の子はもセンチメンタルなんだから、もっと優しくしないと」

「へえ? そういうのよくわかんないや」


ミカちゃんはさも興味なさそうに答えた。まあ、ミカちゃんがそういうのに疎そうなのは、薄々感じていたけどね。


「オルガに女の子の口説き方とか教えてもらえば? きっとあいつ、そういうの得意だろうか……ら……」


突然、激しい頭痛に襲われた。
後ろからがつんと撃たれたような感覚。耐えられなくて、私はその場にうずくまった。


「……っ!!?」

「アイリン!?」

「あ、頭が……!」


しまった! 最近、戦闘らしい戦闘がないから油断してた!

頭の中に何かが入ってくるこの感覚! だれかの、たくさんの人間の、煮えたぎったやけつく感情が……!


「武装した奴らがこっちに来てる! しかも、ものすごい数……!」

「え?」

「まっすぐこっちに向かってくる!っあ……!」

「アイリン!」


そのときだった。どこからか、『強襲』の合図があったのは。

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