青の破軍
10
キャタピラの振動が、直にコクピット内に響く。MSじゃまずないことだ。でもそれが、逆に兵器を動かしてるんだって実感を沸かせた。
MSより機動力は低いけど……まあ、やれるでしょ。
私は前線に出た。スピードは既に出撃してるMWと変わりはないはず。狙い打ちされないよう、あべこべに走りながらMSに攻撃していく。
始めてMWを操縦するけど、思ったより動かせている。よかった。
「やっぱ、MSと違って火力が弱いか」
こっちが攻撃しても、MSは傷ひとつついていない。
しかも弱いのは火力だけじゃない。動きも、反応も桁違いに悪かった。
特に反応が遅いのは堪えた。パイロットが反応しても機体がワンテンポ遅れて移動するのだから、避けられる攻撃も避けられない。
敵がMWだからと油断しているせいか、1機しか仕掛けてこないで、攻撃にキレがないことが幸いだった。これならなんとか破壊されずに済む。
一機のMWが攻撃を避けようとして基地に近づいた。そのMWを狙った攻撃が、上へ上へと上り基地に当たった。
「変なところに逃げるから……!あっ!」
MWが一機、前に出た。
あの機体は……ダンジ!
「バカ! ダンジ、待って!」
うかつに前に出すぎだ。基地に弾が当たって逆上したんだろうけど、軽率すぎる。その距離じゃやられてしまう!
なんとか援護しないと駄目だ! 私はMWを急速旋回させた。
敵は前に出るMWを捉えた。ダンジのMWはMSの足に近づく。WSは、足を振り上げた。
……駄目だ! やめて!
心のなかで叫んだけど、遅かった。
敵がMWを、まるでボールを蹴るかのように破壊した。
『ダンジィィィィィィ!!』
シノの悲鳴が、コクピットに響いた。
ダンジのMWは粉々になってしまった。あの壊れ具合じゃあ、もう……。
『ちきしょおお! ダンジがぁぁっ!』
『足を止めるなぁ! あと少し! あと少しで!!』
オルガも悲鳴に近い叫び声をあげた。
あと少し、その言葉は半ば懇願しているようにも聞こえる。
「焦りすぎるから……! バカ野郎……!」
私も、小さく唸った。
死んだらなんにもならないじゃない!
『オルガぁ! なんかこっち見てる!』
ユージンの声だ。MSが、MWから体を出してるオルガに目をつけている。
がぱりと顔がは開いた。オレンジ色のカメラが、彼と彼のMWを捉えている。どうやら、オルガのことをリーダーだと認識したようだ。
次の瞬間からは攻撃を仕掛けてきた。ユージンはあわててMWを走らせた。次々と降ってくる弾をなんとか避けている。
……でも駄目だ。どう見てもギリギリで回避している。いつ当たってもおかしくない。
まずい。今、指揮官を失ったら終わりだ。
私は全速力でオルガの前に出た。
そして、MSの顔をめがけて攻撃した。もちろんそれで倒せるなんて考えていない。
『馬鹿アイリン! お前まで前に出るな!』
「うるさい! あんたがくたばるよりはマシでしょ!」
標的が私に変わった。銃口が私に向けられる。
私は紙一重で攻撃を避けた。
相次いでくる攻撃を、オルガたちと出来るだけ離れるように避けていった。もう大丈夫だと判断すると、今度はぎゅっとその距離を縮める。
MSは、ダンジを倒したときのように、足を出そうと動いた。
「さっきみたいにいくと思ってんの? バカが!」
その行動は読んでたんだよ!
私はギリギリまで引きつけて、あと少しで直撃、というところで横に避けた。
ブースターが悲鳴をあげていたけど構わない。
さて、みんなが思いきりサッカーボールを蹴ろうとして、ミスしたとき、どんな行動に出るだろう? 反動でバランスをくずし、思わず尻餅をつくはずだ。
MSもそれと同じだった。重い体を片足じゃ支えきれない。MSはゆっくり倒れていった。
「MWだからって油断してるから!」
でも、それじゃあ敵を戦闘不能にしたことにはならない。MSはまだ動けた。
銃口がこちらを捉える。
私のMWはさっきの移動で足がやられてしまった。さっきみたく、速くは避けられない。
直撃、される?
それは、まさに本能だった。
理屈なんて全くない。ただ、私の脳が、体が、感じ取ったのだ。
幾度となく英雄の名をほしいままとした、その存在を。
「……来た!」
ガンダムの存在を。
to be continued…….
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