青の破軍

5


午後。私は早速ゲットしたMSのパーツでHi-νガンダムを直すことにした。

おっちゃん達はいなくなったから、みんなに隠す必要はない。ということは、暇そうな人に手伝ってもらってもOK! ということだ。

10人でもいれば、もう数時間で整備が完了する。いやあ、嬉しい誤算ですなあ。


「おやっさーん! 今ちょっと忙しい?」

「おお、まあな。こいつの整備にちょいとてこずってる」


おやっさんは、アゴでミカちゃんが乗っていたガンダムを指した。

ガンダムは、今は整備のために膝立ちをして、コードやら予備のパーツやらを取り付けている。

……見たところ、そんなに激しい損傷はないようだけど。


「そういえば、これの名前なに?」

「ガンダムバルバトスだとよ」

「バルバトス? ソロモン72柱の?」

「知ってるのか」


詳しくは知らないけど、アラビアン辺りの昔話に出てくる悪魔達の名前じゃなかったっけ。

ブエルとか、アンドラスとか、サブナックとか。サブナックとか!

MSでも、ガンダムヴァサーゴとか、ガンダムアシュタロンとかいるしね。


「じゃあいいや。タカキくんあたりを借りるね」

「構わねえが、一体何するつもりだ?」

「オルガからこの間のMSもらったから、相棒を一気に直そっかなーって」


そう言うと、おやっさんは思い出したかのように「そういえばもう隠す必要はねえのか」と返した。


「お前の方はいいよなあ。ちゃっちゃと直せるンだからよ」


おやっさんは図面を見ながら頭を掻いた。


「そんなにむずかしい?」

「俺はMW専門だし、古い機体だからな」

「ふうん」


確か、300年くらい前の機体なんだよね。そんな昔の機体がよく動くよなあ。あっ、でもMSって、整備すれば1000年とか何万年くらい古いものでも動かせるんだっけ。


「自分の分が終わったら手伝いに来るね」

「助かる」


本当に参ってるんだろう。おやっさんはほっとしたように言った。

おやっさんと別れたあと、ちょうどタカキくんと出会い、人集めを頼んだ。それから自分はHi-νガンダムを地下から持ってくる作業をした。


「MSがもう一機?」

「マルバが隠してたのか?」

「三日月さんが乗ってたMSみたいだな」


そういえば、こいつをみんなには見せたことなかったんだっけ。地上に出したとたん、私の相棒はかっこうの的になっていた。


「アイリンさんっ、どうしたんですか? これ」


相棒から降りたとたん、タカキくんにも目をキラキラさせて質問された。

なんだかんだ言ってMSは格好いいもんね。そりゃあ、少年のツボをがっつり掴むわ。


「私の相棒。これに乗って火星まで来たの」


どっかからか来たシノも、「うおー!なんじゃこりゃあああ!!」と叫んでる。どこにいてもすぐわかる奴だ。


「すんげー! 三日月のよりでっけえじゃないか! かっけえええ!」

「そうでしょうそうでしょう。もっと褒めてもいいのよ?」

「でも三日月の奴の方がかっけえ!」

「なんだとコラ」


そこは嘘でも一番かっこいいとか言ってよ。ていうかウチのHi-νが一番かっこいいから。強くてきれいでかっこいい、最強のMSだから!


「ほんとだ、バルバトスより大きい」

「ありゃミカちゃん」


いつのまにかミカちゃんも来ていた。どっかの誰かさんと違って、大人しいから気づかなかったや。

そのどっかの誰かさんは、まだ三日月のMSがどうのこうのとか言ってる。だから、私のHi-νのほうが一番だってば!


「後ろの羽根みたいなやつ、あれ何? バーニアじゃないみたいだけど」

「あれも武器だよ。どう? 明日にでもペイント弾で戦ってみる? 慣らし運転も兼ねてさ」

「いいねそれ」


ミカちゃんが笑った。

ミカちゃんってクールな割りに好戦的だから、本当に根っからの兵士気質だよねえ。


「さて! そのためにも、早く修理しないと。あとは足のスラスター直すだけだから! 頼むよみんな!」

「はーい」


整備班は元気な声で返事をしてくれた。新しい機体をいじれることが嬉しいらしい。

子供って素直に乗ってくれるからいいよね。こっちまでエネルギー貰える。

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