青の破軍
目指せ、甲子園!
「今度の仕事は野球で甲子園に行くことだ」
某日。
社長の命令を受けたオルガが、参番組に放った第一の言葉がそれだった。
組長であるオルガの謎の命令に、もちろんみんな困惑した。全員どうするこうすると疑問を口々に言う。
「はい先生! 質問です!」
「俺は先生じゃねえよ。なんだアイリン」
「CGSは警備会社なのにどうして野球をしなくちゃいけないんですか?」
「こっちが聞きてえよ知るか」
オルガが半ば吐き捨てるように言った。その様子からして、本人も今回の仕事に納得していないことが伺える。
まあきっと深い考えなんてないんだよ。どうせ作者の気まぐれだよ。
少年組が若干イラついてる組長におびえぎみの中、空気の読めないシノがのんきに手をあげた。
「なあオルガ、そもそも野球ってなんだ?」
そこからか。
「俺も知らねえ。誰か知ってるやつがいるか」
お前もかよ。
ていうか組長が知らないでどうやって仕事をこなそうとしたんだよ。
室内がさらにざわついた。みんな口々に知らないだの、こういうものじゃないかと、憶測を述べたりしている。
どうやらこの世界……っていうか、ここじゃ野球はあまり流行りものではないらしい。貧しすぎてスポーツするお金も暇もないということなのかしら。
そんな中、サブリーダー的存在のユージンがあごに手を当てて言った。
「野球ってのは男と女がゲームして、負けたほうが服を脱いでいくゲームじゃねえの?」
それは野球拳だ。お前どっからその情報手に入れたんだよ。そんな野球あってたまるか。
しかしその間違った情報で全員一気にテンションが上がった。
「そんな仕事が俺らに回ってきたのかよ!」
「おっぱいのでかいねーちゃんと脱ぎあいっこすんのかあ。くぅーっ! 想像するだけでやべぇーっ!」
「その上を行くことになったりなんて……!」
「その女が4〜5、60のババアがブスだったらどうすんだよ」
昭弘の言葉で一斉に静まり返った。
「……それでもいいかもしれない」
本人は誰にも聞こえないよう言ったらしいが、生憎室内は静まり返っていてダンテの呟きは全員に丸聞こえだった。もちろんみんな聞かなかったふりをしたけど。
結局、野球を知っているのは私とビスケットだけだった。間違った情報を信じつつあるメンバーに、正しい野球を簡単に教えた。
「はーい、せんせい。『こうしえん』ってなんですか?」
「それは地球の日本にある高校野球の聖地だねえ」
「日本ってどこですかー?」
「アジアの島国だよ」
「アジアってどこですかー?」
「……」
私は地球儀を持ってきて地理を説明した。
オーストリア大陸とかユーラシア大陸とかあって、アジアはこのカテゴリーで、日本はここにある小さな島国だと。
高校もみんな知らなかったので、日本の学校のシステムも色々教えた。ここに来て改めて勉強って大事なんだって理解したわ。なんだかんだていつも学校サボっててすみません。
ていうかなんで私みんなの前で授業してんの。違うでしょ。
「とにかく、野球は9人でするから、まずメンバーを決めないと」
「はいはいはい! 三日月さんがいいと思います!」
「ちょっと黙ってねタカキくん」
こいつ口を開けばすぐ三日月三日月と。なんだよキラキラした目でこっち見やがって。
当の本人は呑気に木の実食べてるぞ。ていうかお前はもう少し会議に参加しろ! 興味・関心が無さすぎるだろ!
「まあ、ミカちゃん筋肉も体力もあるからレギュラーは確定だろうけどね」
「それはそうだね」
それから、ごちゃごちゃいうその他大勢を押さえること30分。私とビスケットと話し合ってなんとかメンバーが決まった。
ピッチャー 三日月
キャッチャー ビスケット
ファースト シノ
セカンド ユージン
サード オルガ
その他 シノ
タカキ
ライド
ヤマギ
ごめん私もそんなに野球詳しくないからポジションとかよくわかんねえや。
まあなんとかなるよね!
ということでポジションも決まったことだし次回実践に入っていきます。
「えっ、これ後半に続くの?」
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