青の破軍

2


「……さっきも言った通りだ、あんたの要求は飲めない。あんたの道理がどうだろうと、こっちにも通さなきゃいけねえ筋がある」


オルガは、モニターを瞬きひとつせず睨み付けた。名瀬のおっさんは、そんなオルガに怯むことなく余裕ある表情でそれを聞いている。

今までの名瀬のおっさんとの会話を要約すると、うちの社長は名瀬のおっさんに実質CGSの権利を全て受け渡したと言っても過言ではない。そのまま、鉄華団の全財産を名瀬のおっさんに渡したら団員のこれからを面倒見てくれるらしい。

でも、オルガはそれを拒否した。

拒否したということは、名瀬のおっさんとそのバックについてるでっかいマフィアを敵に回したということ。全面戦争だ。


『お前ら、生意気の代償は高くつくぞ』


最後に不適な笑みを浮かべて、通信はぷつりと切れた。

静かになったとたん、ビスケットが叫んだ。


「慎重にって言ったじゃないか! 交渉の余地はあったはずだ」

「わかってるけどなあ、通すと決めた筋は曲げられねえよ」


オルガはビスケットにタブレットを渡した。ビスケットは、諦めたようにため息をついてそれを受けとる。

チャドが敵艦からエイハブりアクターの反応をキャッチし、こちらも大急ぎて戦闘体制に入った。

このエイハブりアクターの出方は、MSが数機出ている。こちらもそれに対応しなければならない。つまり、MSの出番だ。

オルガがトレーニングルールにいる昭弘に連絡を取った。


「昭弘、出てくれるか」


モニター越しに、汗だくの昭弘が返事をする声が聞こえた。昭弘は恐らくそのまま格納庫へ向かっただろう。

……シャワーを浴びる時間とかないから、あの汗だくの中、密閉されたノーマルスーツを着て、狭いMSのコクピットの中に……。

できれば、昭弘のMSは今後乗らない方向でいけたらいいなあ。うん。


「ミカぁ!」

「もちろん」


ミカちゃんがこくりと頷いた。


「頼むぜ」


ミカちゃんはドアの前に立っていたお嬢さんに一言、邪魔と行ってブリッジを出た。かわいそうに、お嬢さん、少し泣きそうな顔してるよ。ただでさえ戦いに慣れてないんだから。

私は艦長席に腕を置いて、指示を出し始めるオルガの顔を除いた。


「オルガ、私は?」

「当たり前だ、期待してるぜ」

「りょーかい。そうこなくっちゃ」


オルガがいつものウインクを交えた自信ありげの笑みを浮かべた。私もつられて笑ってしまう。なんにせよ、また戦えるというのは嬉しいものだ。

私は鼻歌を歌いながら、一気に慌ただしくなっているブリッジを出た。

今度こそ楽しい戦いになりますように!




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