「あの、さ」
「な、なに?」
「好きなタイプって、どんなの?」
康太が丸々タイプなんだけれど、そんなこと言えっこない。
「そ、うだね……こてこての名古屋弁喋る芸能人とか見ると、面白いし男らしい感じがして好きかなぁ」
「こてこての名古屋弁、か。難しいな」
長い前髪をかき上げながら、ふっくらとした唇を尖らせてゆく姿に焦った。
「や、でも、あの……僕が好きなのは、康太、だから」
小声になってしまった。
うつむいて立ち止まると、康太の歩みも止まった。
腕を引っ張られ、電柱の影に連れ込まれて、何だろうと顔を上げてみたらすぐ目の前に康太の顔があって――目を見開いている間にキスされた。
何これ。やっぱ、夢?
すごくやわらかな唇の感触が、まだ、触れられたところに残っている。
康太が照れたように笑った。
「かわいいこと、言うから」
やばい。限界だ。恥ずかしくて、嬉しくて、踊りだしてしまいそう。
「もう一回する?」
近づいてくる顔。好きだなぁ。綺麗だなぁ。こんなに整っているのに――性格だって明るくて、人気者なのにどうして、僕を?
まぶたを閉じたら、キスの感触はより強くなるって今知った。
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