トライアングルヘル


 学校は嫌いだ。 徒党を組まなくてはならない場所。独りでいると、可哀想な人のレッテルを貼られてしまうどころか下手をすれば苛めが開始されて、どうにも息苦しい空間が更に、悲惨なものになる。 どうでもいいではないかと思うのに。 他人なんて。 つながりなんて。 心の奥底までは触れられない。それなのに何故皆、群れたがるのか。 けれどその輪に入らなければ異端とみなされ結局は、更に面倒なことになる。 だから笑顔の裏側に本心を隠す。興味の無いドラマを見て、翌朝の話題づくりをする。そんな毎日を送っていたのに――気がついたらクラスから浮いていて。 無駄な努力をしたのだなと、机の上に置かれた花瓶を見てこそり、拳を奮わせる。

 今日も、いないものとされているのか。 席につこうとするのだが、いつの間にか椅子が無くなっていて、机の上の花だけはご丁寧に毎日取り替えられている。そんな労力を使うくらいならば、もっと己へ意識を向ければいいのに。 仕方が無いから立ったまま授業を受ける。一番後ろの席だからこそできる技だ。 先生はこちらを見すらしない。ただ時たま、隣の席の安達がちらり、視線を寄越してくるのだが……やはり、何も言ってこない。 別に平気なのだけれど。いや、本当は。 泣きたくなる程に、悔しい。 群れたくはなかった。けれど、こんな風に自分が、たくさん人間のいる中で一人放り出されると、その価値を疑いたくなる。 わがままだ。 わかっている。 無性に不安が押し寄せてくる、それだけの話。 そう思わなければやっていけない。自分が透明人間になってしまったかのような、このクラスの中で一人、過ごすことは。

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