男子高校生の秘め事


 埃臭い体育倉庫に二人はいた。外は夕暮れ。けたたましく鳴く蝉の声は体育倉庫まで届いている。

 夏の熱気がもわっと立ち上るそこに、男の精の生臭さが混ざっていた。

 関根の膝に向かい合わせで座り、己の自身と彼のものを同時に握っていた飯田ははぁっと肩で息をしながらそれを離す。用意してあったティッシュで手のひらについた二人分の液体をふき取った。

「ああ気持ちよかった」

 まぶたを閉じ、余韻を思い出すように言葉を吐き出した飯田へ関根は短く尋ねた。

「もう気が済んだか」

「そんな訳ないだろ。こんなんただの抜きっこなだけだし。やっぱお前の中に入らないとさぁ」

 舌なめずりをしながら飯田は、目の前でまだ息を荒くし脱力した様子で座る関根へ飛び掛かった。その小柄な身体つきからは予測できない程の力強さで彼を体操マットの上に押し倒す。

「いいじゃん。好きな奴とじゃなきゃできないなんて女みたいなことを言うなよ。男なんて精液撒き散らしてなんぼ、だろ? 世界中を俺の子孫で埋め尽くしてやる! 的な」

 飄々と言う飯田を関根は恨めしそうに睨み、ため息をつく。

「その理屈は今の状況に合わないだろうが。男同士じゃ孕めんだろうにお前の頭は本当に残念だな」

 小さく、どけよ、と付け加えるが、飯田は彼の上から全く動かない。胸を押し付けるようにして上半身の自由を奪い続ける。

 飯田がそれだけの強い力を発するとは予想をしていなかったのだろう。関根は驚いたように顔を顰める。そんな様子を見て、笑いながら飯田は彼の顔を覗き込んだ。

「え、例えだってば。ほらほら俺の太ペン様がお前のキャップに納まりたがってんだろ。早く股を開け」


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