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イレイザーの様子がおかしいので、無理やり飲みに誘い、酒を飲ませた。ある一定ラインを越えて飲みすぎると、気弱になるところが昔からあるためだ。そうすれば昼間は話さないことも話すと思ったのだ。
そうすりゃどうだ、新零ちゃんと別れたなんていいやがる。あの藍川ニーナと付き合ってるって聞いたときは冗談かと思ったが、写真を見せられた時は心臓が止まるかと思った。新零ちゃんがかわいすぎて。
もとはといえば、イレイザーに藍川ニーナの曲を勧めたのは俺だ。それが、どうしてこうなった。

酔いつぶれてきたイレイザーを眺めつつ、ぼやきを聞いているが、合理的がどうの、時間は有限だなんだと言っているくせに、この有様はなんだ。いつものイレイザーヘッドはどこへ行った。こりゃそうとうだな・・・未練たらたらじゃねーか。こいつこんな奴だったか?

「連絡取ってみろ」
「・・・・・」
「謝って、より戻せばいいだろ」
「・・・・・」
「新零ちゃんだって、後悔してるかもしれねぇし」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・電話かせ」
「・・・は?」
「俺が電話してやろうじゃねぇか!!」
「・・・・・」
「てめぇがしねぇからだろ」
「・・・・・」
「そうすりゃ、新零ちゃんの声を耳元で聞けるだろ!!」
「ふざけんな」
「お前の女じゃねぇだろ」
「・・・・・」

すっと差し出されたスマホのロックを聞こうと思ったが、藍川ニーナの誕生日で楽に解除できてしまった

“・・・・・はい”
“新零ちゃん?”
“・・・・マイクさんですか?お久しぶりです”
“久しぶりだな!!”
“どうかしたんですか・・・?相澤さん関係なら切りますよ?この前、別れたので”
“いきなりシヴィーだなぁ!!”
“切りますね”
“ちょっと待ってて、今酔いつぶれたイレイザーがいんだけど”
“ほっとけばいいと思います”
“あー・・・怒ってんのか”
“・・・怒ってませんよ”
“なら”
“私が相澤さんと一緒にいることで、彼が幸せになれないのなら、別れた方がいいと思ったんです”
“それじゃぁ、新零ちゃんの気持ちはどうなんだよ”
“私は全部言いました、そのうえで相澤さんが決めたので私がこれ以上言うのはおかしいと思います”
“・・・それでいいのか”
“去る者は拒まず。別に今更なので私は大丈夫です。・・・・・・っそれじゃぁ、相澤さんをお願いします”

「イレイザー。新零ちゃんって、嫌われ者なのか?」
「・・・・ガキのころの話だろ」
「・・・お前の考えがどうか知らねぇし、俺は愛繋新零についてそんなに知らねぇけどな。お前の幸せ願ってるやつ、泣かせてんじゃねぇよ」
「・・・・泣く?」
「涙声で、お前のことお願いしますっだってよ。誰がてめぇの面倒なんか見るか!!」
「・・・・・」

スマホを机に叩きつけるように置いて、店を出た。
お願いしますの語尾が震えたのがわかった。それまで、淡々と話していたにも関わらず最後だけだ。大体、あんな言い方をするってことは変なもんに慣れちまってる証拠だ。
イレイザーがいまいち何を言ってるかわからなかったが、おそらく別れた理由も、あいつが勝手に拗らせただけだ。覚悟の決まっている新零ちゃんの気持ちを無碍にして自分の不安を取り除こうとした結果だ。

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