03


執着していたのは自分の方だった。
向こうが自分に執着しているのだと勝手にそう思っていた。アプローチはいつも向こうからだった。もしかしたら、あの時、“別れたくない”と言われるのを期待していたんだろうか。
あの日から周りから大丈夫かと散々言われた。自分は大丈夫なはずだったが、怪我もミスもするし、忘れ物も多く同じ道を行ったり来たり・・・。そして、ニュースがやけに気になる。
今日のこの辺りは平和だろうか・・なんて、自分はそんなキャラのヒーローじゃないことくらいわかっている。

帰宅して椅子に座り、水を飲んだ。あいつに呑まされたあげく、支払は自分もち。ふざけんなという気持ちもあるが、どんよりとした気分に全部沈んで行った。後悔するなと言われたが、後悔どころか日常生活に異常をきたしてきた。
呼び方が、相澤になったことに思った以上にダメージをくらった。思えばずっと名前で呼ばれていた。
静岡に来た理由を自分だと思っていたなんて、今思えば恥ずかしすぎる。自惚れもいいところだ。そもそも、ならなんで静岡に来たか・・なんて、知らない。何か目的があって来たはずだ。それにあれだけ資格を取りながら、こっちに来てまで何をしようとしているんだ。卒業したら何をするつもりか・・・聞かなかったのは、一緒にいればそのうちわかるだろうと思ったからだ。

「・・・・・」

あの潔さも、今思えばあいつがガキのころのことが影響しているのだろう。あいつの素直さと個性が人を遠ざけたし、父親のことも、あいつを置いて行った母親も、自分から人が離れていくことに慣れてしまったからだ。それゆえに、あいつは人を慎重に選んでいた。心が冷えることに慣れても、それが嫌だからだ。
“藍川ニーナには人が集まるのにね”と言ったのは、その裏で“愛繋新零からは人が遠ざかる”と言っていたのだろう。

「・・・・っ」

いい歳してなんだこの様は

あいつの覚悟が不安だった。今を2度目の人生だという新零が、あんなことを言うのを怖いと思った。たやすく消えてしまいそうで、それでもいいなんて言わないでほしかった。どこか命を軽く見ているところがあるのには気づいていた。昔よりも良くなったと言っても、それでも、死んだらその時はその時だと言っていたことも合せて、そんなことないだろと言ってやりたいと思う時もあった。足手まといなんて思ったことがない、弱い奴は傍にいらないなんて思わない。


ただ、あいつが死ぬことが怖かった

世間体なんて気にしないが
大切な女の前くらい、格好つけたいと思っていた
だが、これだけの醜態をさらせば、今更失う物もない


今度は、あの日とは違う。ちゃんと頭が冴えてくるのがわかる。電話をかけようとスマホのロックをあけるために、あいつの誕生日を入力した時
緊急要請がかかった

ALICE+