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いつもより抑え気味な同期の声に、目を開けようとしたが痛みが走ったため無理に開けるのはやめておいた

「目、覚めたか?」と聞いてくる同期に軽く返事をすれば、安堵の声が聞こえた

「新零は無事か?」
「無事だ。つい昨日まで、隣のベッドに仲良く同じように包帯巻かれて眠ってたぜ」
「同じように?」
「新零ちゃんも、目の疲労が限界まで来てたみたいだが・・・・・お前、覚えてねぇの?」

言われてみればそうだ
粗方敵を片づけたところで味方の加勢も到着し、合流できず、連絡も取れない新零を探すために、再び建物の中に戻った

「デパートで停電しただろ」
「そんな前から説明するな、それくらい」
「じゃぁ、新零ちゃん探しに戻ったのは」
「覚えてる」
「もう少し待ってりゃいいもんを」
「・・・・・」
「新零ちゃん、気絶したお前を引きずって自力で出て来たぜ」
「・・・・・」
「あんな暗い中、どーやって出口まで来れたんだか俺にはわからねぇけど・・・ダッセーなぁイレイザー」
「うるせぇ」
「マイクさんがいて良かったって気絶した新零ちゃんを俺が抱き留めたんだが、この意味、お前にはわかるのか?」
「・・・・・まぁな」
「・・・・・とりあえず、お前も新零ちゃんも無事でよかったよ」
「そりゃぁ、どうも」
「新零ちゃん、本当いい女だな」
「やらねぇよ」
「くれとも言ってねぇだろ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「昨日、こんな奴が旦那でいいのかって聞いたらよ」
「・・・・・」
「足りない部分を補うのが夫婦だと思います。まぁ、考えなしに来るのは今回だけにしてほしいって言ってたぜ」
「うっ・・・・」
「女ってのは怖いもんだな」
「そうだな」
「男ってのは、つくづく馬鹿だな」
「あぁ」

暗い中と言っても、懐中電灯は持って建物の中に戻ったはずだ。倒壊しかけの建物内を確認しながら歩いた先に、倒れた柱や瓦礫に囲まれて動けない状態の新零を見つけた。突発的に戦闘に入ったとはいえ、あいつのことだから上手く逃げ出していると思ったが、状況を見て、それができなかったことを察した。大きな怪我もなく、声をかければ嬉しそうな声が聞こえて来た。少し瓦礫をどければ・・・・どけていたのは覚えがあるだが、そのあたりから記憶が曖昧なのは、その途中で何かあったのだろう。


「消太さん、瓦礫をどけてる最中に上から落ちて来た瓦礫に頭ぶつけて気絶したんですよ」
「・・・・・」
「さすがに肝が冷えました」
「・・・どうやって」
「出られるだけの隙間は空いたので自力で出て、気絶した消太さん引きずって外まで。その時、マイクさんとの縁を辿ったので目を使いすぎじゃって。私も病院行きです」
「・・・・・」
「2人とも無事で結果オーライでしょう?それより、消太さんの怪我の方が」
「新零」
「?」
「ありがとう」
「どういたしまして・・・でも1ついいですか?」
「なんだ?」
「消太さんが、私のことを大事に思ってくれるのは嬉しい。でも、今回みたいな状態で助けに来るのはやめてください。」
「・・・あぁ」
「男の人って、馬鹿ですね」
「・・・・・」
「でも、だからきっと、女がいるんだと思いました」
「女がいるから男は馬鹿になるんだがな」
「だから、一緒にいたら丁度いいんですよ」
「・・・そうだな」

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