昔から、報われない人間だと思っていた
力をつけるほどに人が離れていく
クラスメイトも友人も家族さえも

離れていく人間のために
ボロボロになっていつも生傷が絶えないというのに

本当に、どうしてそこまでやるのだろう

腕を磨いている自分も似たようなものかと言えばそうかもしれないけれど
それでも、あまりに報われない

そんな幼馴染をずっと見ていた
誰よりも

だから、気づいたころには
傍にいないと壊れてしまいそうで
自分が背負うつもりのそれとは別に
彼女が人を護るなら
自分は、彼女のよりどころになれたらいい

そう、柄にもなく思ったのだ

まぁ、独占欲ともいうのだろうが


幼少期に
そうとは知らずに禁術を使ったことで
その名前を知らない祓い人は、ほとんどいない
それを、その歳でできてしまったこと
逆に、それをやってしまったこと

その力と才能への期待と
その力と才能への恐怖
それから、嫉妬
だから、いつも陰口を叩かれ、媚を売られ

それを気に入らないのか
人に嫌われるような態度をとって

あぁ、また報われない

おれの前では、こんなに笑うのに、怒るのに
それを知っている人間が数えるほどしかいない


「こんなところで寝たら、風邪を引く」

『・・・・・・』

あぁ、また顔に傷なんて作って
何をしてるんだ

もう十分強いだろうに
その辺の大人よりずっと力もあるだろうに

おれを頼ればいいのに・・・

「ほら、会合も、もう終わった」

『・・・・ん』

「起きろ、明翠」

『・・・・・・的場?』

「また、顔に傷を作って、馬鹿だな」

『的場には、関係ないでしょう!』

「綺麗な顔が勿体ない」

『・・・余計なお世話よ』

「ほら、置いて行かれる」

『・・・あ』

奥で、待っている父と兄が目に入ったのか
少し慌てた様子で、自分の持ち物を確認して
立ち上がったが、すぐに身体が傾いた

『・・・っ』

「・・・っと」

『・・・・・・ごめん』

「?」

『足を少し捻っただけよ。医者にも見てもらったから大丈夫、ありがとう的場』

そう言って、手を振り奥に消えて行った

「また、あんなに傷だらけで。一体、何をしでかそうとしているんだろうねぇ」

「また何か禁術にでも手を出そうとしているのかもしれないな」

「気味が悪い」

「でも、的場一門の次期頭首の許婚になると噂になっているが、どうなんだろうねぇ」

「まぁ、その方がどこぞの分家に入るよりいいんじゃないか?
 力のある家なら周りが巻き沿いをくう心配は少なくなるだろう?」

「それもそうだねぇ。椿さんのところも、巻き沿いをくわないうちに手放せばいいのに」

「そういうなよ、まだ15歳だろ?」

「しかし、椿の家もどうするんだろうな
 末の子は、こっちには来ないんだろう?兄の方は、まぁまぁの腕らしいが」

「実際、梓美さんが生きていたころは、彼女が一番力を持っていたそうじゃないか」

「なら、あの娘は、母親譲りの強さってことなのか?」

「いや、それ以上だよ。あんな力、どこで手に入れたんだか
 きっと、近いうちに何か起きるよ・・・そうやって潰れた家も少なくないからな」

「関わらないのが一番だな。巻き込まれでもしたらひとたまりもない」

「あぁ、でも椿の女を欲しがる家もあるだろう?」

「それは、そこそこ力がある家だろう?後世のためにと思うなら間違いはないだろうさ」

「なるほど」



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