“なんで、あんなに傷だらけなんだろうね”
“なんか、怖いよね・・・”

“また、傷が増えてるよな?”
“顔はいいのに、もったいないよなぁ椿って”

「明翠、何、また1人で昼食べてるの?」

『悪いですかー』

「また、絆創膏増えてるし・・・大丈夫?」

『これくらい平気よ』

「なら、いいけど。ほらっ、一緒に食べよう?」

『・・・ありがとう』

「で、的場くんとは、どうなのよ」

『だから、幼馴染だって』

「でも、昨日も先輩の告白断ったんでしょう?あ、もしかしてそれで怪我した?」

『断ったけど、怪我とは関係ないわ』

「ふふっ、冗談よ・・・あ、噂をすれば的場くん」

『・・・・・・・・』

「お昼なら、下で食べた方がいい」

『そう?ありがとう的場』

「・・・・どういうこと?」

『屋上は人が多いってことじゃないかしらね』

「ふぅうん。・・・それより、相変わらず名字呼びなのね」

『それは、昔からよ!名前で呼んだことない』

「嘘。私、小さいころは幼馴染のこと下の名前で呼んでた
 途中からやめたけど」

『別に、深い理由はないけど。昔から的場は的場なの』

「ふぅうん」

『何よ、その反応は・・・』

「べっつにー」

『・・・・・・』

「怒らない怒らない。かわいい顔が台無し」

『・・・・・かわいくない』

「明翠は、怒ってもかわいい」

『・・・そういう、柚晴さんも、相当おもてになるようですが?』

「そんなことない」

『美人さんが何言ってるのよ。身長少しわけて』

「・・・今年も伸びなかった?」

『・・・・・・3ミリ伸びた。』

「ふっ・・3ミリって。今、いくつ?」

『152.5』

「・・・微妙」

『・・・・・・・』

「私も、そろそろ止まらないかなー」

『不吉なこと言わないでよ、私はまだ止まったわけじゃない!』

「ごめんごめん」

『柚晴、今いくつ?』

「168cm」

『・・・・・・・・』

「身長あげるから、代わりに、その余ってる脂肪分を私に頂戴」

『・・・・・・・・』

「ふっふっー。柚晴さまの観察眼を舐めたらいけないよ」

『・・・・あげれるならあげたいっていうほどないわ』

「私よりはある」

『そうね』

中学からの付き合いの柚晴は、私が傷だらけで学校に来ても
こうやって、何事もないかのようにふるまってくれる
時には心配して言葉をかけてくれることもある

「ねぇ、明翠」

『何?』

「本当に、その傷大丈夫?」

『・・・・うん』

「その怪我の理由。的場くんは、知ってるの?」

『・・・・・うん』

「やっぱり悔しいなぁ・・・」

『?』

「でも、明翠が言わないってことは、私が知ったところで
 どうすることもできないことだってことでいいんでしょう?」

『うん・・・ごめんね。でも、私は大丈夫だから』

「クラスの子たちも、あんな遠巻きにしなくてもいいのに」

『まぁ、こんな怪我だらけだったら私でも、関わるか悩むところだわ』

「そう?私は、気にならなかったけど」

『柚晴はすごいね。そういうところ尊敬する』

「それ、褒めてる?」

『すごく褒めてるわ』

そうやって、また笑って
くだらない話をして
町のケーキ屋においしいところがあるだとか
今日の帰りは一緒に帰ろうだとか話しいてる間に予鈴がなった


数少ない友達の1人
本当は、全部話せたら楽なのだけど
妖の話をしたところで、彼女には見えないから
関係のない世界のことを教えたくなかった



『それで、屋上の妖は?』

「おれが片付けた」

『どんなのだった?』

「そのあたりにいる小物と同じ。練習にはなったよ」

高1の時は、的場とは違うクラス
2年、3年は、柚晴とも的場とも同じクラスだった

「昨日の呼び出しは、断ったの?」

『・・・知ってたの?』

「あぁ」

『当然断った。興味ないし、どうせ上手くいかないもの』

「如月とは、上手くやってるだろ?」

『柚晴は、優しいの。こっちにもしつこく干渉してこないし
 本当は・・・嘘もつきたくないんだけど、仕方ないね』

「・・・・・・・・」

『どうして、私たちには妖が見えるんだろうね』

「さぁ」

『・・・見えない世界って、どういう感じなんだろうね』

「・・・・」

『今より、静かなのかな』

「そんなことを考えても仕方がない。見えるものは見える」

『もし、見えなくて、祓い屋の人間でもなくて
 すごく、何事もなく、普通に生活してたら・・・私は、私でいれたのかな』

「・・・・もしそうだったら、明は、今よりずっと」

『ずっと?』

「何でもない・・・そんなことを考える暇があったら
 怪我をしない方法でも考えなよ。そうすれば、如月に余計な心配をかけることもなくなる」

『そうだけど・・・実践あるのみだから、仕方がないでしょう?
 結界の強さを測るのも大変なんだから、ギリギリを見定めないと』

「あの札は、使えるようになったのか」

『的場こそ、弓の技術は上がったの?』

「そういうお前も弓の練習をしてみたらどう?」

『破魔矢は的場の方が強く力が出るでしょう?椿は、陣がメインなんだから』

「椿の陣は、書く必要がないから便利そうだが、弓も明なら上手くいく」


『うーん』

「どんくさいから、傷が増えるだけか」

『どんくさいは、余計。・・・破魔矢か、私にもできるのかな』

それから、いくらか練習したけれど
物理的に力がないせいか上手くはいかなかった
もっと練習すればできるかもしれない

もともと、椿の人間は、陣を使う
ある程度の距離に陣を構えることもできるので
飛び道具は必要ない
クナイに似た物も使うことはあるけれど
基本的には、陣と呪術を色々と覚えてきた
最近は、蔵で見つけた刃物を試しに使ってみたりしている

的場の弓と同じで、人には同じようには見えないらしい
それに、力のない私でも重みを感じないのだ


「明姉、ごはん出来てるよー」

『ありがとう、明日って、私が当番だっけ』

「うん。明日は、から揚げがいい」

『・・・了解』

靴を脱いで一度着替えに自室へ向かってから食卓についた

祓い人の父と祖父と、祖母と中学生の妹、
今日は、大学生の兄が帰ってきていたので
6人で食事をする
見かけ上、仲は別に悪くはなかった


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